Where is Cinderella?

新しいシリーズ『parody a la carte』にからの投稿になります。

今回は初めてのパロに挑戦してみました(*^_^*)

コナンのキャラクターを童話・シンデレラに置き換えた自己満足なお話です。

名前も少しだけ捻って、遊んでみました~(≧◇≦)

あいかわらず蘭に優しくないので、彼女のファンのかたは閲覧をお控えください。

苦情は受け付けませんので、悪しからず。

最後までお付き合いいただけると恐縮です。





Where is Cinderella?


「・・・・・・ここはどこだ?随分と遠くまで来ちまったな・・・」

 一人、佇む男がポツリと呟く。

 普通のどこにでもいそうな服装をした黒髪の蒼い瞳を持つ、彼の正体はこの街の王である息子・シン。

 数か月前に、父親である王・ユウサクの誕生日パーティーでシンが一目惚れした娘を探している途中だった。

 その女性が落としていったガラスの靴を袋に持ち、だいぶ歩いたその時。

「ちょっと、そこの貴方。悪いんだけど、手伝ってくれないかしら?」

 心地よいアルトの声がシンに響いた。

「え?俺?」

「そう、これを見て。」

 手にしているその状況にすぐさま気づいたシンは彼女に駆け寄り、真剣な顔つきで訊ねた。

「わかった。なにをすればいい?」

「ありがとう、これをこうして・・・・・・」

 的確にピンポイントだけ指示を出すのをしっかりと聞き、作業に取り掛かる二人。

 初めてとは思えないほどに息の合う手つきに、気づかないままそれは続けられた・・・





「ふぅ・・・これで終わりね。なんとか治療できたわ・・・」

「よかった、手伝えて。さすがにこれは一人じゃ無理だったしな。」

 ようやく手伝いを終えたシンは嫌な顔することなく、安堵の息を吐いていた。

「改めてお礼を言わせて。ありがとう、手を貸してくれて。」

「どういたしまして。・・・あ、俺の名前シンって言うんだ。アンタは?教えてくれねえか?」

「私はシホ、お察しの通りドクターをしてるわ。貴方はなにをしてるの?」

「え?俺のこと知らないのか?」

「ええ。」

 常々、右腕のシュウとレイの二人から王子らしくないと言われていた為、若干へこみ気味でいると不思議そうな顔をされてしまい、慌てて彼女に身分を告げる。

 すると、かなり驚かれてしまい、苦笑いになってしまった。

「名前は知ってたけど、顔まで覚えてなかったから・・・名乗らないとわからないわね。確かに顔は整っているけど、その口調・・・全然王子らしくないわ。なんだか友人と話してる気分よ。」

「アハハ・・・」

「で?そんな貴方がどうしてこんな所にいるの?」

「じ、実は・・・・・・」

 初めて逢ったというのに、とても親しみやすい女ドクターに知らない内にシンは事情を話していた。

 持っていたガラスの靴を見せながら。

「それじゃあ、ずっとそのガラスの靴の持ち主を探してるの?」

「ああ、だけど全然見つからなくて・・・年齢とか関係なく女性全員に履いてもらってるんだ。」

「・・・・・・おかしいわね、この先にはもう人が住んでいないはずよ?」

「え?嘘だろ?」

「本当よ。私ここら辺ではドクターとしてよく往診に来てるけど、間違いないわ。」

「じゃあ、どこにいるんだ?なんで逢えないんだよ・・・・・・俺、これでも王子なんだけどなあ・・・」

「・・・・・・そう、自分で言っちゃうのもどうかと思うけど・・・幻でも見てたんじゃないの?」

「いや、幻だったらあんな風に靴を忘れるっていうか、置いてかないだろ。まるで見つけてくれって言ってるみたいでさ。なーんか、あからさまな気がしたからそれは違うと思う。」

「でも、街中の女性全員に試したのよね?」

「ああ、だけどここまでやっても逢えないなんて・・・こんなんで見つかんのかなあ?なんか、自信なくなってきた・・・」

 項垂れるシンにシホが素朴な疑問を投げかける。

「そもそもどうして、その女性を探してるの?」

「どうしてって・・・まあ、一目惚れってヤツ?美人でスタイルもよかったし・・・」

「伴侶として迎え入れたいってことなのかしら?」

「あ・・・えっと・・・できれば、そうあればいいなとは思う、けど・・・」

「・・・・・・?なんだか、訳ありみたいね・・・よかったら話を聞きましょうか?私ならドクターとして守秘義務を持ってるし、貴方を診るって名目にすれば気分的によくないかしら?・・・まあ、無理強いはしないわ。ただ困っている人がいるのを放っておけない私の性分でもあるからね。」

「・・・・・・じゃあ、えっと・・・シホ、でいいか?聞いてくれると・・・助かる。」

「ええ。もちろんよ、シン。」

 ふわりと微笑む志保の温かさにシンは言いにくいことを話し続けた。

 一目惚れした女性を探して妻に迎え入れたいとユウサクに伝えたときに、なぜかそれを拒否されたこと。

 パーティーで女性と仲良くなるのはいいが、その人物についてはどうしてもダメだと明言されたこと。

 理由を聞けば、魔女のアカコから『彼女だけはやめたほうがいい。己の身を護りたいのなら絶対に近づけてはいけない。危険が迫ってくる。』と告げられたこと。

 今まで、それなりに反抗心を持ってユウサクと向き合ってきたが、理由が曖昧すぎることでシンが盾突いて、内密にシュウとレイに靴の持ち主を探すように命じたらしい。

 だが、それを目敏く気づいたユウサクが激怒。

 シンのワガママで忙しい二人の手を煩わせるな、そんなに探したいのなら自分の力でやれと言われたこと。

 それで、ずっと探していたのだが、この先に人が住んでいないと聞いて、さすがにこれ以上はどうすればいいのかわからなかったみたいだ。

「なるほどね・・・帰るに帰れない、八方塞がりってこと。」

「ああ~~、親父にどやされる~~。あんな大見得切っちゃったから見つからなかった、なんてマジで俺、ヤられるかも~~。」

 まるでムンクの叫びのような顔つきになったシンにシホは呆れた。

 だが、王子らしくないその言動が好感を持つのも、また事実だった。

 現にこうやって、会話がポンポンと出てくるのだから。

「ねえ・・・シン。貴方って、本当に王子なの?」

「・・・・・・喧嘩売ってんの?・・・悪いけど、今はそんな気分じゃ・・・」

「ユウサク氏はその女性とシンを一緒にさせたくないんでしょう?だったら、別にこのまま帰ってもなにも問題ないじゃない。だって見つからないのが事実なんだから。」

「は?なんで?」

「あのねえ・・・よく考えなさいよ。いくら探しても見つからないってことは、相手がシンに興味がないとか、逢う気がないってことじゃないの。シンが王子だってわかってるのによ?これってどういうことが、わかるかしら?」

「・・・・・・・・・・・・え?俺、もしかして・・・振り回されて・・・たの、か・・・?」

 ずっと彼女を見つけて、親父を見返してやる!と意気込んでいただけにシンは驚くしかない。

「シン・・・気づくのが遅いわよ・・・」

「け、けど・・・」

「シンの妻になりたいのなら、名乗り出るわよ。それができないのなら、見つけてほしいとそれなりのアクションを起こすのが普通よ?ガラスの靴を置いていったのなら、それを履いて自分だとわかってもらわなければならないでしょう?・・・姿を見せないでどうやって見つけられるのよ・・・明らかに遊んでるじゃない。拒絶の態度を見せてなお、私を見つけてごらんなさいって言われてみて?シンの心を乱して、ほくそ笑むのが目的だって思わないかしら?」

「い、言われてみれば・・・」

「ユウサク氏には、少しバツが悪いと思うけどその女性よりも魅力的な相手を見つければいいだけの話、でしょう?」

「そう、だよな・・・・・・あのさぁ・・・シホ、よかったら・・・」

「イ・ヤ・よ。」

 シホのおかげで見えなかったものが見えたことで、少し心が軽くなったシンだったが・・・

 お願い事をする前にノーを突き付けられてしまい、つい言い返す。

「おい、俺なにも言ってないんだけど?」

「なんとなくわかるわ。ユウサク氏に逢わせてこのことを上手く言ってほしいってことなんでしょう?」

「うぅ・・・」

「まあ、せいぜい頑張りなさい。」

「じ、じゃあ、せめて専属のドクターとしてウチに来てくれないか?勿論、都合のつくときにでも。それくらいはさせて欲しい。」

「専属も嫌よ。私は苦しんでいる人達を救うのがお仕事なの。シンだけというのはどうにも納得いかないわ。」

「ええ~~。」

「でも・・・・・・友人ならいいわよ。」

「本当か?」

「ええ、シンとなら楽しい時間を過ごせそうだしね。」

「嬉しいよ!シホ!これからもよろしくな!?」

「・・・・・・こちらこそ、よろしく。」

 思いがけない出逢いに喜ぶ二人。

 こうして、シホはクドウ家の者達に受け入れられた。

 友人としても、ドクターとしても・・・

 のちに、シンの趣味である推理小説にシホが興味を示した為、彼は嬉々として彼女に本を貸し、二人で感想を言い合っていたときに医学方面で彼よりも犯人を見つけたことがわかった。

 さらに仲良くなり、ついにシホは相棒として隣に立つのだった。

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もしも、未来が変わるのなら 後編

『もしも、未来が変わるのなら』の後編になります。

ブログのコメントでネタを頂いたので、それを元に描いてみました。

会話文が主な書きたいところだけを書いた、自己満足なお話です(^^♪

そして、あいかわらず蘭に優しくないので、彼女のファンのかたは閲覧をお控えください。

苦情は受け付けませんので、悪しからず。

最後までお付き合いいただけると恐縮です。

提供してくださった方へ、ネタを頂き、ありがとうございます(*^_^*)





もしも、未来が変わるのなら 後編


 園子と小五郎から言われてから、月日が過ぎた。

 その間に、何度も新一に連絡をしてきたけれど、ついに繋がらなくなった。

 解約をしたことで、そのついでとばかりに蘭の携帯も使えなくなる。

 どうやら有希子から新一の携帯の解約と同時に蘭の分もしたのだと。

 小五郎から有希子により、そう電話があり、申し訳ないことをしたと言われた蘭はその行動に憤慨していた。

 だが、そんな矢先にある犯罪組織が壊滅したことがニュースで取り上げられ、世間は騒然とした。

 他人事のようにその事件をテレビでぼーっと見ていた蘭だったが・・・

 ほとぼりが治まった頃に、ポストにある手紙が届いていることに気づく。

「え?新一から?」

 差出人に新一の名前があったことで、今までのお詫びとして贈ってきたのだと思い込んだ蘭はいそいそとを切る。

 しかし、そこに書いてあったのは・・・

 さらに蘭を不機嫌にさせるものであった。

 



『蘭へ


これが届いてるってことは、もう全てが終わっている頃だと信じたい。
だから俺が今までお前に言えなかったことを書こうと思ってるよ。
手紙なんて初めてだから、変なところがあったら悪いな。
でも、聞いてくれると助かる。


蘭は俺に何度も“早く帰って来い”って言ってたけど、そう言われる度に俺は辛い想いをしていた。
理解してくれるだろうと頭ではわかっていても、感情がそれについてきてくれるのかはなかなか難しくてな。
俺だって帰りたかった、蘭の元に帰りたかったんだよ。
だけど、俺が関わっていた事件はそれを許してくれない。
自分から首つっこんだんだから自業自得と言われればそれまでなんだが、それでも俺は最後まで諦めたくなかった。
先の見えない恐怖に何度も悪夢をみたこともある。
眠りたくても眠れなくて、仲間たちに迷惑をかけたこともいっぱいあった。
俺は探偵だから、これからもこんな風にお前の傍にずっといられるかどうかなんてわからない。
短いかもしれない、長いかもしれない。
蘭を不安にさせない、なんて約束できっこないってようやくわかったんだ。
次第に蘭への愛情が恋愛じゃなくて、親愛だったんだなって納得してきて・・・
そうこうしている内に、仲間である彼女が俺にとって本当に大切なヤツだって気づいて、鈍感すぎて自分でも笑っちまった。
仕事と恋愛を器用に両立できていれば、きっと蘭との未来もあったかもしれない。だけど、俺は無理だったよ。
俺たちは隣に立つことはできるかもしれない。
だけど、一緒に歩いてはいけない。
好きな人とはずっと一緒にいたいと考える蘭と、私生活や恋愛よりも仕事を優先しなくちゃいけない俺とじゃあ長続きしないってな。
お互いに相手に対してイラついたり、気持ち疲れちまって休まらない。
こんな本音、今まで言えなかったのもきっとダメだったんだろうなって今はそう思うんだ。
長いこと幼馴染みしてたくせに、なにやってたんだろうな俺たち。
だけど、もういい加減お互いに、解放してもいいんじゃないかって・・・そう思った。
蘭がどう思っているのか、わからない。
結局、返事くれなかったから俺のこと好きだったのか最後までわからなかったしな。
一応、告白の件はもう時効だとは思うが念のために言っておく。
俺は蘭にフラれたと思ってる。
でも、それでいいと思ってる自分もいるんだ。
これは俺のケジメとして伝えておくな。
もう俺のこと、待たなくていいよ。
これからは幼馴染みとしてまた逢おうなんて気は、もう俺にはない。
あのときの気持ちは決して嘘ではなかったんだ。
返事はもらえなかったけど、それをきっかけに本当に好きな人が誰だか気づけたし、そのことは感謝してる。
本当にありがとうな。今まで、待っててくれて。本当に嬉しかった。
大変な想いも沢山したけど、こうやっていい仲間たちにも出逢えたし、彼らとの縁をできたことは俺にとって宝物だ。


今は、アメリカの大学で犯罪心理学の勉強をして、充実した毎日を送っている。
勿論、彼女も同じ大学内にいる。
日本と違って新鮮なことばかりで、俺にはこの地が性に合ってるって実感しているんだ。
世界は広い。俺が見ていない所もいっぱいあるだろう。
近い将来には世界を股に掛ける名探偵になって、蘭の幸せを祈っているよ。
幼い頃にした約束、果たせるようにお互いに頑張ろうな!


工藤新一』





「はあ?なによそれ?待たなくていいって、幸せを祈ってるってなんなのよ!私はそんなこと思ってないのに!新一までそんなこと言うなんて!勝手に決めないでよ!こんな手紙なんかで終わらせようなんて・・・!ひどいよ新一!!」

 悪態を吐きながら、号泣する蘭。

 初めて新一の想いを知り、哀しみが止まらない。

(知りたくなかった!!聞きたくなかった!!)

 ずっと避けていた現実を叩き付けられ、ひれ伏すしかないのだった。





◇◆◇◆◇


 そして、数か月後。

 ずっと泣き通しで引きこもっていた蘭だったが、なにを思ったのか受験勉強を始めたのだ。

 小五郎はようやく吹っ切ってくれたのだと思い、声を掛けるが・・・

「え?なにが?」

「なにがって・・・新一のこと諦めたんだろ?だから、受験勉強に専念して前を向いていこうとしているんじゃないのか?」

「私、新一のこと諦めてなんかないわよ。だって逢いに行くんだから。勉強しないと受からないじゃない。」

「おい・・・一体、なんの話してるんだ?」

「あれ?言ってなかった?私、新一のいる大学に行くから。大学費用よろしくね。絶対に合格してみせるから!」

「・・・いい加減にしろ、蘭。」

「なによ、受験勉強の邪魔しないでちょうだい。」

「この人の言う通りよ。蘭、貴女は自分がなにを言ってるのかわかってるの?」

 背中越しに小五郎に文句を言っていると、英理の声が聞こえてきた。

 思わず本音が零れる。

「・・・お母さん?来てたの?」

「随分な言い草ね・・・私が来ちゃいけないっていうの?」

「だって二人は恋人みたいな関係がいいんでしょう?じゃあ、いつ来るかわからないのは当然のことじゃない。・・・それで?なにか用なの?」

 不機嫌な英理の顔もなんのその、蘭は負けじと言い返した。

「貴女の大学進学のことで話があるの。こちらに来なさい。」

「私は別に話すことは・・・」

「貴女にはなくても、私達にはあるの。いいからペンを置きなさい。いろいろと聞きたいことが山積みなのよ。」

(なによ?この忙しいのに・・・・・・あ、もしかしてアメリカの生活のことを言っているのかしら?そうよね・・・新一に逢えたらすぐに結婚ってことになるし、早ければ子供だって・・・)
 
 どうせなら二人もアメリカに呼んで、新一と蘭の住む近くに部屋を借りてあげてもいいかもしれない・・・

 そんな都合のいい妄想が蘭の頭で駆け巡る。

(できれば新一と二人っきりがいいけど、世話を焼いてくれるなら甘えてあげないとね!二人のことだからきっとベタベタに可愛がるでしょうし・・・あ!有希子さんたちもいるし、お手伝いさんも雇えば私なにもしなくてもいいってことよね?よ~し!なんか燃えてきたわ~!!)

 これからの将来のことを考えると、ますます勉強を頑張らないと!と気合を入れる。

 そんな夢物語を妄想している蘭の心など露知らず、三人は腰を下ろす。

 英理は早速、本題に入った。

「まず一番重要なこと聞くけど、蘭。貴女、本気でアメリカに行く気なの?」

「うん、行くよ?今さらなに聞いてくるのよ?」

「・・・その大学が蘭の偏差値と釣り合うかどうかは?ちゃんと知ってるのかしら?」

「詳しいことは知らないけど、とりあえず入りやすい学部に希望するわ。勉強はそんなに好きじゃないけど、毎日欠かさずにしていれば不可能なことはないわよ。私、運強いし、今までそんなことなかったからきっと大丈夫よ!」

「・・・・・・じゃあ、受験や渡米するための費用は?私達にそんな財産があると蘭は思ってるの?」

「そんなの知らないわよ。でも娘が行きたい大学に入る為に借金でもして用立ててくれるのが親の務めでしょう?・・・まあ、最悪足りなかったら新一に出してもらうし、そんなに心配しなくてもいいわよ。アメリカに行けばなんとかなるわ。ねえ、どうせなら二人とも私と一緒にアメリカに行かない?きっと楽しいわよ。」

「「は・・・?」」

「アメリカに行って返事をして恋人になったら、新一ならすぐにプロポーズしてくれるだろうし、しょうがないから私達の子供の面倒をみてくれればこれまでのことは全部水に流してあげるからさ!あっ!なんだったら私達の専属の弁護士とボディーガードとして雇ってもいいよ!お金は湯水のようにあるんだから、遠慮しなくていいって!」

「「・・・・・・。」」

 できもしない未来をすらすらと語られて、二人は声も出ない。

 今さら返事したってなんにもならないというのに、この娘は一体なにを考えてるのか。

 とうとう妄想と現実がわからなくなってしまったのかと思ったくらいだ。

「これでアメリカに行った後のことは話が着いたわね。じゃあ、私勉強するから。夕飯できたら呼んでね。」

 立ち上がり、自室へ向かう蘭を英理が引き止める。

「ち、ちょっと蘭!」

「あ、それと家事は二人でなんとかしてね。私それどころじゃないし。お父さんだって全然できないってことはないでしょう?」

「ら、蘭?お前なに考えてんだ!?」

「多少まずくても文句言わないから!カレーとかそんなでいいし!」

 あっけらかんとしたことを言う蘭に英理はなんとか言葉を出す。

「・・・・・・蘭、話がずれてきてるわ。もう一度座りなさい。私達が言いたいのはね、そういうことじゃないのよ。」

「なによ、聞きたいことなんてどうせ大したことじゃないでしょう?それ以外になるがあるって言うのよ?」

「・・・・・・話を聞け、蘭。」

「お父さん?」

 厳しい顔つきになった小五郎に蘭は理由がわからない。

 そんな娘の理解力のなさに呆れつつも一番言いたいことを伝えた。

「俺たちは、アメリカ行きは認めない。勿論、費用も出さない。そんなに行きたいのなら俺たちを説得してからにしろ。」

「な、なんでよ!?娘が行きたいってい言ってるんだからそれを叶えるのが親ってもんでしょう!?」

「不純な動機で合格できるほど世の中、甘くないんだよ!つーかお前、アイツがどこの大学にいるのかすらわかってねえだろが!」

「そ、それは・・・そうだけど!」

「・・・無謀なことはやめるんだ。例えわかったとしても、お前には無理だ!」

「そんなことない!絶対に受かってみせるわ!」

「ちょっと貴方たち、落ち着きなさい。」

 つい言い合いになる二人を宥める英理。

 また後日に話し合うことでとりあえずその場を過ごせたが、やはり蘭の意志は固く、平行線のままだった。

 勉強するのは構わない。

 本来受験生なのだから、しないほうが問題だ。

 だが、蘭の場合は特殊というか、新一を主体で考えているから始末に負えない。

 本人の自覚のない思い込みは解けるどころか、妄想の世界に行ったままで。

 とうとう無視という形で二人から距離を置き、時は流れ・・・

 蘭は新一の大学を調べあげ、見事合格してしまった。

 ・・・執念というのは恐ろしいものだ。

 その想いがあれば、どんな未来も切り抜けたのかもしれないのに。

 そして、蘭は小五郎と英理に合格を告げ、渡米した。

 向こうで新一と恋人である志保が夫婦になったことも知らずに・・・

 



◇◆◇◆◇


『新一。工藤新一、知りませんか?』

 蘭はなんとか英語を使って、新一の所在を大学の生徒に聞いていた。

 ようやく逢えるその喜びで、答えを待つ。

 だが、返ってきたのは、

『シンイチ・クドウ?ああ、彼なら卒業したよ?婚約者と一緒に。』

 まったく予想しないものであった。

 詳しく聞いてみると、新一は婚約者のシホ・ミヤノとこの大学に入るとすぐに飛び級にして、つい最近卒業したばかりだと言うのだ。

 それと同時に結婚式を挙げ、日本のシャーロックホームズの彼が選んだ妻はアイリーンと呼ばれ、何度も話題にされテレビにも出ていたらしい。

 蘭は知らぬところだが、小五郎と英理は気づいており、なんとか諦めさせようとしていたというのに・・・

 寝耳に水の話に、ただ驚くしかない。

「ええっ!嘘っ!?」 Σ(゚д゚lll)

「そんなの、知らない知らない!」 (/ω\)(*ノωノ)

「なんで?なんでなの~?」 (ノД`)・゜・。

「あっ!そっか!これってドッキリよ!」 ( ;∀;)

『冗談、ですよね?そうですよね?』 (∩´∀`)∩

 もう一度、蘭は聞いてみる。

(お願いだから、そう言ってよ~!)
 
 だが、『間違いない』と言い切られ、ついにプッツンした・・・( ̄д ̄)

 



◇◆◇◆◇


「なんでこうなったのよ?私が望んだのはこんな未来じゃない!」

「・・・蘭。」

「そもそも新一が返事待てなかったのが悪いんじゃない!あのとき園子がしっかりと言ってくれれば私だって新一に返事をしてたわ!」

 やはり全てを失った蘭は、園子の予想していた通りの言葉を放った。

 自分の非を認めず、彼らの所為にする言動に英理は呆れるしかない。

 泣き喚ている蘭を迎えに来て欲しいと国際電話を受けたものの、手続等で難解な英文を読むのにかなり時間がかかり、ようやくアメリカに着いたばかりなのだ。

 そんな娘の言動に、情けない想いでいっぱいだった。

 大学で百面相をしたと思ったら、最後にはブチ切れ、暴れまくって大騒ぎを起こし、ヒステリックに叫んでポリスマンに拘束されたらしい。

 現場を見ていた周りの人達にはかなりドン引きされてしまい、その上蘭の失態を隠すことなく明言されてしまった。

『おい、聞いたか?あの黒髪の日本人の女の子。ガキみたいに癇癪起こして暴れまくったんだってよ。』

『ああ、さっき同僚が教えてくれたよ。なんでも「シンイチシンイチ」うるさくって、すっげえ迷惑したってさ。』

『大和撫子な見かけしてんのに、中身全然ダメじゃん。おまけにカラテ・・・?だったか?“鬼が出た~!!”ってビビったやつもいたって話だ。』

『うわ~、マジ恐怖でしかねえ。黒髪でそれって・・・あのホラーのヒロインみたいだな?』

『えっと、サダコだっけ?』

『ああ、“ク~ル~キットクル~♪”のアレだよ!』

『トラウマになりかねえレベル~!』

 アハハと笑うガタイのいい男性職員が話していた。

 それを聞いたとき、英理は顔から火が出るほど恥ずかしかったのだ。

 ここまで来て、日本の印象を悪くした娘にため息しか出てこない。

 会った早々に彼らの愚痴を聞かされる身にもなってほしいとつくづく思った。

 冷静になるように自分を落ち着かせる。

 このままでは蘭だけの恥ではなくなるような気がしたのだ。

「・・・それでも過去は変えられないのよ?蘭がどう足掻こうと新一君が彼女を選んだことで蘭の望む未来はもう来ないわ。」

「だって・・・」

「それにね、蘭?もし返事をしていたとしても、今の貴女じゃ無理よ。誰かに言われたからなにかをする、してもらう・・・なんて、相手に任せっきりで上手くいくなんて自惚れもいいとこだわ。」

「でも新一はずっと私のこと好きでいてくれたのよ?だから告白してくれた!それに浸ってなにがいけないのよ?単なる乙女心じゃない!」

「・・・別に浸るなとは言わないわ。それは貴女の好きにすればいいと思う。新一君からの告白が嬉しかったから大切したい、それも理解できなくもないわ・・・けど、新一君の気持ちを無視して一人で恋愛してたって、なんの意味もないでしょう。おままごとじゃあるまいし、人の気持ちは不変じゃないのよ。」

「だって・・・新一が、私を裏切るから・・・だから・・・」

 どんなに諭しても、言い訳ばかりする蘭に英理の堪忍袋の緒がブチっ!!と切れた。

 それはもう盛大に。

「・・・・・・いい加減にしてちょうだい。大学で暴れて、警察にまで迷惑かけて、迎えにきてくれと言われたときの私の気持ち・・・貴女にわかるかしら?そんなに新一君を悪者にしたいのなら自分でなんとかしなさい。貴女がそれを望むのなら私はもう知らないわ。・・・勝手にしなさい。」

「お、お母さん・・・?」

「貴女が言ったのよ?アメリカに行けばあとはなんとかなるって・・・・・・蘭、よかったわね?大学合格して・・・貴女が望んだ未来になったわよ?」

 ニッコリと満面の笑みを浮かべられ、蘭の顔色が青くなる。

 あのとき、判断したことが裏目に出るとは思わずにいたのだろう。

 皆がそれを危惧していろいろと説得していたというのに、人の話を聞かないからこんなことになるのだ。

 蘭はとうとう観念するしかなかった。

 

 ――――もしも、未来が変わるのなら


 今度こそ、ちゃんと相手の話を聞こう。

 まるで幼稚園児のような決意をする蘭だった。

過去からの訪問者 中編  R-18・要注意です!!

『世界一初恋 高律』よる『過去からの訪問者』の中編になります。

“純情ロマンチカ”のウサミサで登場した小説家の従兄弟である椎葉水樹と律ちゃんがイギリスで知り合っていたら?

嵯峨先輩に弄ばれたと思い込んで、海外へ旅立った律ちゃんの意外な過去を妄想してみました。

律っちゃんと水樹の関係、そして前編の最後で描いた事情。

もしかしてあったのかもしれない、IFなお話です。

オリキャラが登場します(*^_^*)

過去とはいえ、律ちゃんがひどい目に遭いますので、苦手な方は閲覧をお控えください。

駄文ですが、最後までお付き合いいただけると恐縮です。


※※※※※


久しぶりにセカコイからの投稿になります。

ただ今、コメントが遅れていますが、明日中にはレスをしますのでしばらくお待ちください。

いつもご迷惑をおかけしています(;´・ω・)





過去からの訪問者 中編 


 あれから、律は水樹により気持ちを落ち着かせた後。

 高野のことを聞かれ、先ほどから誤解をしていることを解こうと今までのことを話すが、信じられないと言われてしまい、逆に説教を受けていた。

 忘れたはずの男と偶然にも仕事先で再会したのは不可抗力だとしても、律を大事にしていなかったことや泣かせたこと、ようやく初恋がおぼろげになろうとしていた矢先に、今までの全てを否定したひどい仕打ち。

 嫌がる律に関係を強制し、自分を好きだと言えなどと迫り続け、編集長だからとモラハラのような接し方をされたこと。

 酒に酔い、嵯峨を忘れずにいる律を強引に抱いたこと。

 どれもが律の気持ちを無視しているのではないかと言うのだ。
 
 過去にセフレのような扱いを大人になってからもしている高野が、律を幸せにできるのかと問われてしまった。

 ムキになって、そんなことはないと主張する律だったが、水樹は納得できないと言う。

 これ以上はひどいことを言ってしまいそうだから、とりあえず仕事場に行けと部屋を追い出され、しょんぼりした気持ちでいる中で律は高野に逢いたくて、彼の部屋を覗いた。

 だが、そこに高野はおらず先に会社に行ったのだと思い、急いで行く。

 それでも、席にいないことに律はショックを受けた。

「あ、律ちゃんおはよ~。」

「お、おはようございます。木佐さん。あの・・・高野さんは?どこに行ったんでしょうか?」

 恐る恐る木佐に高野の不在を問いかけると、不思議そうな顔で見詰められてしまった。

「え?高野さんなら朝一で会議に出てるよ?」

「あ・・・そうでしたね、忘れてました・・・すみません、教えていただいて。」

「いいけど・・・どうしたの、律ちゃん?な~んか元気ないね?」

「いえ、ちょっと寝不足なだけでして・・・お仕事中なのに邪魔しちゃって申し訳ないですね。ありがとうございます。」

「ん~、わかった~。でも、無理しちゃダメだよ?」
 
 素直にハイと言う律に木佐は心配しつつも、業務を熟した。

 そして、午前が過ぎ、昼を超えた13時頃。

 さすがに腹が減ったと皆が言い出したところに、綺麗な顔立ちのした青年がエメ編に訊ねてきた。
 
「りーつー。」

 その声に律が振り向くとそこには水樹がいたのだ。

「え?水樹?どうしたの?」

「この辺で用事があったから寄ってみたんだ。律、昼飯は?もう食べた?」

「ううん、まだ・・・でも、俺・・・食欲、なくて・・・」

「そっか・・・」

「わざわざ来てくれたのに・・・ごめん、水樹。」

「いや・・・俺もごめんな、今朝は。言いすぎたよ。俺、律のこと心配で心配で溜まらなかったんだ。」

 高野を部屋から追い出して律も追い出して、いろいろとお説教をしていたことを反省したのか申し訳ないような顔でいる水樹に律は首を振った。

「あ~あ・・・目、まだ腫れてる・・・いっぱい泣いたもんな・・・大丈夫か?律?」

 コクリと頷く律を横からツンツンと突く木佐が問いかけた。

「ねえねえ、律ちゃん。この人、誰?まさか・・・元カレ?」

 こっそりと耳打ちする木佐の言葉に律は異常なほどに反応して、大声を上げた。

「ち、違います!ただの友人です!」

 バッサリと否定する律に水樹は膨れ顔だ。

「ひどいな、律~。一番の親友に“ただの”はねえだろう?俺たちの仲ってそんなものだったんだ・・・」

「み、水樹・・・」

 ショック・・・と書かれた台詞を背負っている親友に言い過ぎたと律は反省した。

「律ちゃんが言いくるめられてる・・・」

「随分と馴れ馴れしいんだな。」

「しかも会社まで押しかけてくるなんて、なんか訳ありって感じだよね?」

「「確かに。」」

 コソコソ話す三人に水樹はニヤリと笑うとそれに応えた。

「その通り。俺と律は特別な関係なんですよ。なあ?律?」

 つい頬を染めた律に、木佐たちはなにやら立ち入ってはいけないような空気を察した。

 そこに営業部から横澤が律に用事を持ってきた。

「おい、小野寺。この前の企画書、訂正を入れておいたからこれで進めろ。」

「あ、はい!わかりました!」

 横澤の登場に、助かったと言わんばかりに律はその企画書を受け取ろうと席を立った。

 だが、急に現れた強張った顔の男に水樹は警戒心を抱く。

 さすがは律の親友だけあって、人をよく見ている。

 瞬時に律を嫌っているのだとそう感じた。

「誰~、この人?他の部署の人だよね?」

 ジロジロと見詰める水樹に横澤は眉をしかめる。

 この自分に馴れ馴れしい態度を取る様が気に入らない様子だ。

「ああ?お前こそ誰だ?見えたことねえ面だな。」

「俺は律の親友の椎葉水樹。・・・アンタは?」

「・・・営業部の横澤隆史だ。それより、お前。仕事中になにしに来たんだ?」

「律のお見舞い来たんですよ。今朝、かなり疲れさせちゃったから。」

「はあ?なんだそれ?」

 意味のわからない会話にはてなマークを頭に浮かべる横澤。

 彼らが深い仲だと勘違いされても仕方のない言葉に律は気づいていないが、心にかかるストレスというのは、思った以上に体力を消耗するもの。

 案の定、律の具合は万全ではなかった。

 いつもより集中できてないのは誰がみてもわかるくらいに今日は変だったのだ。

「なあ、水樹。そろそろいいだろ?早く帰ってくれよ。」

「・・・しょうがないな~。じゃあ、部屋で待ってるから!」

「はいはい!わかったから、ほら!」

 ぐいぐいと押しのけて帰るように促す律にそこにいる者たちはその関係に不思議そうに見ていた。

 そうこうしている内に、時間が瞬く間に過ぎ夕方になった.

 水樹は律のマンションに帰る途中で偶然、高野に逢う。

「「・・・・・・。」」

 無言になる二人だったが、最初にそれを破ったのは高野のほうだった。

 どうしても気になることがあったのだ。

 今朝の律の様子がおかしかったことや、この男のとの関係が。

 聞きたいことがあると言うと、水樹はここじゃなんだから場所を変えようと歩き始めた。

 高野はそれに黙ってついて行く。

 そして、宇佐見グループが系列するホテルを借り、部屋に入る。

 贅沢すぎるスイートな部屋に高野は圧倒されつつも、本題に入ろうとした。

 だが、それを水樹が遮る。

「ああ、わかってるから。律のことだろ?」

「・・・なら教えてくれ、律とアンタの関係は?イギリスで知り合った律は言ってたけど、本当のところはどうなんだ?それに・・・」

 あの怯えぶりは尋常ではなかったと訴える高野に、水樹は静かに過去のことをポツリポツリと話し始めた。

 



~回想~


 10年前のイギリスのとある場所で。

 律はルームメイトである男・ドミニク=シャルルの手によって、監禁されていた。

 初めての留学でなにかとよく面倒をみてくれて、公私混同に仲のいい彼がなにを思ったのか、睡眠薬で律を眠らせたのだ。

 目が覚めたら、ここに連れてこられたことに、ワケがわからず律は戸惑うしかない。

 まだ覚醒していない身体を起こそうとするが上手くいかず、なぜこんなことをしたのかシャルルに問いかけた。

「どうして?どうして、シャルルが・・・」

「マジで気づいてなかったんだな。あれだけリツにアプローチしてたのに、ほんと鈍感だよなあ・・・リツは・・・」

 腕をつかみ上げられ、首に舌を這わせられ、覆いかぶさるシャルルに律は咄嗟に抵抗した。

「ひぃ!や、やめっ・・・」

「・・・リツが悪いんだよ。男を好きになるなんてあり得ないと思ってたのに、無防備すぎるだろ?どうしてくれるんだよ?・・・なあ?」

 前のように傍にいられない、おかげで恋人とも別れることになったのはお前のせいだという態度で追い詰める。

 濁った瞳で黒く嗤うシャルルに律は戦慄した。

 だが、冷静になってもらおうと回らない頭で、必死にシャルルを止めようとする。

「シャ、シャルル・・・やめ、よう?・・・今なら、引き返せる・・・から・・・だから・・・!」

「もう遅いんだよ・・・責任とってくれ、リツ・・・」

 噛みつくようにキスをして、律の唇を塞ぐ。

 夢中で舌を絡めて逃げるのを捕まえて、唾液を送り込んだ。

 律が苦しさから鼻で息をするのを見たシャルルは肯定したと思い込み、服に手をかけたその瞬間。

 恐怖から、律の瞳がカッと大きく見開いた。

「い、いやああ・・・っ!!」

 ブチブチっとシャツのボタンを引きちぎり、シャルルは素早くそれを紐のように両手を縛りあげる。

 こんな風にした律が悪いんだと言いながら、足を大きく広げ固定するとその滑らかな肌をねっとりと見詰めた。

「や、やめ・・・」

 涙をボロボロと零して懇願しても、全然やめてくれない。

 逆にシャルルの身体に火をつけることになった。

 律のイイところに探し、そこに気づくと執拗に舌を這わせ、舐めあげる。

 その度に震え上がる自身の身体に、律は哀しくて哀しくて仕方なかった。

 嫌なのに、どうして・・・

 まるで自分じゃないような奇妙な感覚に呆然とするしかない。

 嵯峨の手により開発された律の身体は欲望に素直だった。

 まさか、彼以外の男に触られることなんて思っていなかったのだろう。

 恐怖を感じながらも、嫌がらない己の身体が恨めしい。

 そんな律の想いとは裏腹に、シャルルの手は止まることなく、反応し始めた律自身に気づくとそっと下着の上から握り込んだ。

「や、やだあっ・・・!」

「リツ・・・感じてくれたんだ・・・・・・なあ?気持ち、イイ・・・?」

 首を横に振って否定する律にシャルルはくくっと嘲笑うと、手の動きをさらに速めた。

 薄い布に覆われるせいか、自身と擦れて、痛みがジンジンと来る。

 律は我慢ができずに訴えた。

「い、痛い・・・・・・い、たいよぉ・・・・・・」

「ん~?でもイイだろ?直に触るのとまた違って・・・・・・ほら・・・また大きくなった・・・」

「・・・・・・あっ!い、いやぁっ・・・!」

 ヤダヤダと書いてあるその顔に、シャルルは思わず笑い声をあげた。

「アハハっ・・・!リツはヤラしいなあ・・・こんなに濡らして・・・・・・もっと、もっとイジめてやるからな・・・?」

「・・・やめっ!おねがいっ・・・やだぁ・・・!・・・あ、あぁ・・・おねがい、シャルルっ!はな、して・・・!」

 先走りでヌルヌルになった律の下着はすごいことになっていた。

 まるでお漏らしをしたかのように、シミがどんどんと広がっていき、羞恥心から顔を赤くする。

 ピクピクと震えている律自身は、もう発射直前まで来ていた。

 それを目敏く気づいたシャルルが囁く。

「リツ、イキそう?・・・イっちゃいなよ・・・・・・」

「や、やだ・・・・・・や、あ・・・あ、あっ・・・ダ、ダメぇ・・・!!」

 くちゅっくちゅっ、と徐々に速まるその音が耳に響く。

 それと同時に弱いトコロを責められてしまい、

「い、いやああ!!!」

 ついに律はシャルルの手により、下着の中で精を放った。

 その衝撃に愕然としてしまう。

 つぅーと流れる涙がシーツに落ちていく。

 徐々に律の瞳から光が消えていった。

「リツ・・・好きだよ。俺を受け入れて・・・?」

 抵抗する気もないのを見届けると、ゆっくりシャツから手を解放して、ぎゅっと抱きしめた。

「リツ・・・・・・リツ・・・」

「・・・・・・・・・・・・シャ・・・ル・・・・・・ル・・・」

 名前を呼ばれたシャルルは嬉々として、律の唇を重ねた。

 まるで誓いのキスのように、優しく包み込む。

 全ての服を脱がせ、シャルルも全裸になり、下着から溢れた精液を律の蕾に塗り込んだ。

 自身を宛がい、グッと力を入れようとしたその時。

 ダンダンっ!と扉を叩くその音に後ろを振り返ったと同時に男が入って来て、シャルルの顔を殴りつけた。

「シャルル・・・!おまえ、なにしてる・・・!」

「・・・っ!ミズキ・・・!?ジャ、ジャマするなっ・・・!!出てけよっっ!!」

「ふざけんな!!・・・おまえ、こんなことしていいと思ってんのか!?律が哀しむような真似は絶対にするなって、あれほど言ったのに・・・!!」

 おまえは間違ってる!!と言い切られたシャルルは感情に任せて言い返した。

「う、うるサイ!!俺はリツがいればそれでイイんだっ!!出てけよっ!!俺たちのジャマ、するなっ!!」

 二人が大声で喚いても、律は反応しない。

 足を広げたまま人形のように横たわるその異様さに驚く。

 怒りが沸騰し、水樹はシャルルの腹に蹴りを入れた。

「グフォ・・・!!」

 壁に背中を打ち付けられてしまったシャルルは、痛みから次第に意識が遠くなるのを感じた。

「リ、リ・・・ツ・・・リ・・・・・・ツ・・・・・・」

 涙を零して律の名前を呼び続けると、ついに気を失った。

 水樹は律の傍に行き、声をかけるがそれでも動かないことに焦る。

 せめて下着だけでも・・・と穿かせようとするが精液でぐちょぐちょになったそれを手に取ったことで辱められたその事実を知ってしまう。

 代わりに、引きちぎられたシャツをそっと取り、律の身体にかけた。

「律・・・もう、大丈夫だからな?あとは俺に任せろ・・・」

 ぼんやりとした瞳を手で閉じさせると、水樹は携帯を持ち、ある人物に連絡を取るのだった――――



もしも、未来が変わるのなら 前編

期間がかなり空きましたが、『原作 オリジナル』からの投稿になります。

会話文が主な書きたいところだけを書いた自己満足なお話(^^♪

ただ今、シリーズ物の投稿が遅れているため、暇つぶし程度として読み流してもらえればいいと思います。

そして、あいかわらず蘭に優しくないので、彼女のファンのかたは閲覧をお控えください。

苦情は受け付けませんので、悪しからず。

最後までお付き合いいただけると恐縮です。


※※※※※


諸事情で投稿が遅れがちで、大変申し訳ありません(>_<)

もう少しでキリのいいところで終える予定なので、3月に入ってから再び、少しずつ小説作りを開始します。

コメントの返事もきちんと返しますので、もう少々お待ちください。

いつも私の作品を閲覧していただいて、ありがとうございます(*^▽^*)





もしも、未来が変わるのなら 前編

 
 新一が厄介な事件だと言って姿を見せなくなり、あと少しで一年が経とうとする頃のことだった。

 相も変わらず、幼馴染みの事情を理解どころか不平不満を漏らす蘭はすこぶる不機嫌な様子で。

 せっかく電話をしてあげたというのに留守電に切り替わり、メッセージを入れても返答もなく、メールもしてもなしのつぶて状態に怒り心頭のようだ。

 そして、いつものように園子から同調する言葉を聞いて、安心するかのように今日も今日とて園子に愚痴をこぼす。

 それが当たり前になっていた日常がまた始まるのだと蘭は思い込んでいた。

 だけど、返ってきたのは正反対のことだった。

「・・・あのさ、蘭。いい加減、何度何度も電話するのやめなよ。新一君だって、事件で忙しいのわかってるでしょう?だったら、そこまでひどく言わなくてもいいんじゃないの?」

「園子・・・?」

 自分ではなく、新一の味方のような言い方をする園子に疑問を抱く。

「新一君、事件解決のために頑張ってるんだからさ。もうちょっと控えたら?別に悪いことをしてるんじゃないんだから。」

 同情も同調もなく、否定的な言葉に蘭はカチンと来て、言い返した。

「だって、新一すぐに事件事件って捜査に行っちゃうんだよ?責めてなにが悪いのよ?」

「でも新一君が事件を起こしたワケじゃないし、責めるなら犯人にしなさいよ。それに、探偵やってるんだから事件で都合がつかなくなるのは当然のことでしょう?一々目くじら立てても仕方ないわよ。」

「・・・なんで、そんなに新一に肩入れするのよ?」

「なんでって・・・そうね~。最近ふと思うようになっただけよ。こんだけ長い間姿見せなくて、なんにも言わない。けど蘭にはちゃんと連絡を取っている新一君の言動を見ていたらどれだけ厄介な事件に関わっているのかな?って・・・じゃあ、新一君も帰るに帰れなくて辛い想いをしているかもしれない・・・そう、気づいただけのことよ。」

「にしても、納得しすぎよ!」

「え?だって納得せざるを得ない状況だって思ったら、自然とそうなるでしょう?私は別に新一君を肩入れしてるつもりはないわよ?」

「でも、さっきから新一新一って・・・」

「・・・?そうかしら?新一君は私の幼馴染みだし・・・蘭だって同じようなことになったらそうならないの?」

「私は・・・新一から告白されてるし、ただの幼馴染みじゃないわ。」

「そうね・・・確かにその事実は知ってるわ。だけど、それに応えたことは私、聞いてないわよ?」

「!?」

 返事をしていないことを一応自覚しているのか、ぐさりと胸に響いた。

 まさか、園子にはっきりと言われると思っていなかったのだ。

 幸せの余韻に浸りたいという自分の気持ちを知っているはずなのに、なんでそんなひどいことを言えるのか、蘭は信じられない想いになる。

「ねえ、蘭・・・アンタは新一君と特別な関係だって思い込んでいるかもしれないけど、告白を応えていない今、それは成立しないじゃない?新一君からの好意を知って、それを大切にしたい気持ちはわからなくてもないけど・・・」

「だ、だったら別にいいじゃない。新一だって私の気持ちわかってるし、焦らなくても全然大丈夫よ。」

「・・・どうして?そう、思うの?」

「え?」

「だから、どうして蘭はそんな平気な顔でいられるの?私だったら絶対に無理。真さんに告白したのにそんな事実なかったかのように振る舞われたら、ショックを受けるし、泣きたくもなるわ。どうして応えてくれないの?って、私の告白は真さんにとって些細なことなの?って、不安にもなるわ。」

「じゃあ、新一も言えばいいでしょう?応えてくれって言われたら私だってちゃんと応えるわよ。普段待たせているのは私なんだから、それくらいことできるはずよね?」

「・・・・・・蘭は聞かれないと自分の気持ちは言わないつもりなの?新一君が帰ってきても、そのことに触れなかったらずっと言わない気?」

「・・・園子?どうしたの?なにか、変だよ?」

 なんとなく園子の口調が変わったような気がして問いかける。

 すると、はあああ~~と深いため息を吐いた園子が再び口を開いた。

「・・・告白された事実に浸るだけ浸って、あとは放置なんてよくそんな無神経な真似ができるわね。私が新一君ならとっくに縁を切ってるわよ?誠意を誠意で返さない相手を好きで居続けるなんてきっと無理でしょうから。想いも通じ合わないで恋愛ができるわけないじゃない。そんなの片想いと変わらないわよ。」

「なに言ってるのよ、園子。新一は私のこと好きだって言ったのよ?だから・・・」

「だから?嫌いになることはないって言いたいの?あのね、蘭・・・人の気持ちはいつ何時どんな風に変わるのか自分でもわからないものなのよ?想いが一方通行で応えてくれないのなら諦めようと思っても不思議じゃないし、嫌われてしまったと思ったのなら距離を置こうと連絡を絶っても全然おかしくないわよ?たった一つのきっかけで人間関係なんてあっという間に途切れちゃうんだよ。だから恋愛関係なんかで事件が起きるんじゃない。」

「それは・・・」

「・・・とにかく、蘭。新一君にちゃんと返事してあげなさいよ。好きだって言うのなら尚更ね。」

「・・・・・・。」

「・・・私は忠告したからね?あとで“知らなかった”“聞いてなかった”なんて言わないでね?」

 最後まで自分の非を認めようとしない蘭は、反論することもできず黙るしかなかった・・・



 

◇◆◇◆◇


 放課後になり、それぞれ部活動を終えて、帰宅すると蘭は早速小五郎に今日、園子と口論になったことをぶちまけていた。

 コナンがいれば若干嫌そうな顔をしていても、なんだかんだ聞いてくれていたが、今はもう探偵事務所にはおらず、数か月前に母親の元に帰っていってしまい、その捌け口が自然と父親に向くのは当然のことだった。

 大きな声でぐちぐちと園子に対しても、新一に対しても悪態を吐き、ようやくすっきりできたのか、一息つくとジュースを持ってくるように言う体たらく。

 それでも重い腰をあげてわざわざ入れてくれる小五郎に、礼も言わずぐいっと一気に飲み干した。

「まったく新一といい、園子といい、ふざけたことばっかり!帰ってきたら覚えてなさいよね!いろいろなところに連れてってもらって、全部おごらせてやるんだから!園子にも謝ってもらわないとね!」

 フフンとドヤ顔でいる蘭に小五郎がようやく口を開いた。

「・・・・・・おい、蘭。」

「・・・なによ?」

「アイツが自分から言い出したのならともかく、罰としてデートの費用を全部出させるのはやめろ。」

「・・・なんで?当然の権利でしょう?」

「はあ?なにが当然の権利だ。そんなモンどこにあるんだ?お前らはただの幼馴染みで、恋人ではないんだぞ?権利どころか義務もねえよ。さっきも言ってたじゃねえか。蘭、まだアイツに返事してないんだろ?」

「そう、だけど・・・でも!」

「それにだ!お前の言い分を聞いてると俺たちの復縁に対してのデートのときもおごらせていたみたいに聞こえるんだが・・・まさか、蘭・・・そんなバカなことしてねえよな?」

「え?勿論してたけど?それがなに?」

「・・・・・・。」

「お父さん?」

 普段冴えない勘が当たっていたことに、眩暈がするしかない小五郎。

 なんとか浮上しようと、自身を落ち着かせてから蘭と向き合った。

「・・・あのなあ、お前が新一を誘ったんだったらお前が払うべきだろう。なんで俺たちの下見のために、新一に全部おごらせることができたんだ?」

「だって、せっかくのデートなんだよ?男が払ってなにがいけないの?」

「いけないに決まってるだろ。だいたい下見に行ってなんで新一が費用を出すんだ?普通はお前が払うか、なにかしらお礼をするもんだろ?」

「・・・・・・新一の家はお金持ちだし、別にいいじゃない。」

「仮にそうだとしてもだ!お前、さっき言ったよな?デートだって・・・それなら、お前は端から俺たちのために出掛けたんじゃないと指摘されてもおかしくないってことだよな?」

「そ、それは・・・」

「いつも聞いてるとお前からデートに誘うことも多いみたいだし、お前が新一におごらせるのは当然と考えてるみたいだが、それは大きな間違いだ。・・・アイツがそんなに金を持ってるわけねえだろ。」

「なんでよ、いつもおごってくれたんだから持ってるに決まってるじゃない。」

「・・・知らねえのか?新一のお小遣事情ってやつ。アイツはなあ、普通の高校生と対して変わらねえ額しかもらえてねえんだよ。お前に比べたらほんの少し多いだけで、何倍もあるってわけじゃねえんだ。」

 以前に、コナンが親元に帰ったときに文代の代わりに有希子が来て、新一と蘭の間にあった金銭関係のやりとりで、携帯電話を弁償させていたことを小五郎は知ったのだ。

 本体や通話料金を払わせていたことに、有希子はそれはさすがに非常識すぎると詰め寄られ、新一が優作に口止めをしていたから今まで知らなかったけど、知っていたら絶対にやめさせていたことを明言されていた。

 そして、新一のお小遣いが意外と少ないこと、たまのデートやお茶代も全て新一が支払っていたことを教えられ、小五郎はそれをきっかけにもし二人が恋人になったとしてもうまくいかないのではないかと思い始めていた。

 連絡がないと嘆く蘭が園子に愚痴り、その口論の末に知った未だに返事をしていない娘の非常識さに頭を抱えるしかない。

 男は女にお金をかけてこそ、愛情がわかる財布のような扱いだと指摘されてもおかしくないというのに、一体なにをやっているのか・・・

 学生の内は割り勘が常識だろ、とつい突っ込んでしまうほどだった。

「嘘・・・じゃあ、なんで新一はおごってくれたのよ?」

「その辺は推測でしかねえが、貯金から出したり、生活費から借りてるとしか思えねえよ・・・情けねえな。知らなかったとはいえ、アイツに俺たちのために金を出させていたなんて、男としてこれほど屈辱的なことはねえぞ。俺はアイツにそんなことしてもらえるほど落ちぶれてねえ・・・自分たちのことは自分たちでなんとかするさ。アイツにそこまでお膳立てしてもらうなんて、こっちから願い下げだ。」

「ひ、ひどいよ、お父さん。」

「・・・この際だから言うが、俺たちは今の距離感がちょうどいいんだ。アイツと一緒に暮らすとなれば喧嘩も耐えねえだろうし、たまに逢うくらいの恋人みたいな関係が一番しっくりくるんだよ。蘭には悪いが、俺たちは同居する予定はない。英理だって仕事仕事で、一緒に暮らせたとしても今までと対して変わらない・・・同じ家にいても、すれ違いばかりだろうな。」

「・・・・・・ひどい・・・私が、どれだけ二人をくっつけようとしたと思ってるのよ・・・そんな事情があるんなら・・・さっさと言ってくれたらよかったじゃない・・・」

「そのことに関しては俺たちの落ち度だ。本当に悪かったって思ってる。ちゃんと話し合えばよかったかもしれないってな。」

「そうだよ!だったら私はなにも悪いことしてないじゃない!だって知らなかったんだから!」

「・・・ああ、知らなかったのはお互い様だ。でも知ってしまえば、今までと同じようにはならねえ・・・隠し事が嫌だって言うのなら、お前も覚悟を持て。」

「覚悟って・・・そんな大げさな・・・」

「・・・どっちにしろ、子供のままでいられるのはあと少しなんだ。いい加減、現実をしっかり見ろ。」

「・・・・・・。」

 なにを言い張っても肯定してくれない父親の言葉に、蘭は涙を溜めて家を飛び出した。

 一方の小五郎は、辛い想いをするであろう娘を不憫に想いながら、心を鬼にするしかないと拳を強く握る。

(乗り越えてくれ、蘭・・・お前ならできると信じてる・・・俺が言っても説得力がないのは、尊敬されていないから理解している。だが・・・)

「それでも、俺は・・・蘭の父親だ。」

 ぐっと前を向き、憂いに似た笑みを浮かべるその顔は、確かに父親そのものであった・・・





グッバイ・マイベストフレンド

『さよなら、大好きな人』の続きになります。

前回にもお知らせしておいた、新一君だけが幼馴染みのままの感情でいることをようやく三人が知ります。

それによって、反応する彼女たちのその後は・・・?

あいかわらず、全体的に蘭に優しくないお話であり、指摘も多いのでタグをつけさせて頂きます。

彼女のファンのかたは閲覧をお控えください。

最後までお付き合いいただけると恐縮です。





グッバイ・マイベストフレンド


 志保が日直で席を外していると、最近になって仲良くなった園子が教室に戻ってくるのを待ちわびていた。

 その横で女二人の親しさに内心で複雑な気分になる男が一人。

「なあ、園子・・・」

「ん?なーに、新一君?」

 機嫌よくこちらを向く園子に新一はつい本音を零した。 

「最近、宮野とやけに仲がいいよな?お前ら、なにかあったのか?」

「え?」

「だって、アイツなんにも言わねえし、前に園子が宮野に喧嘩をふっけたことがあっただろう?そのときにもしかして、逆にやられたとか・・・」

「・・・なに?その推理・・・全然違うわよ。」

 はあ~っと大袈裟にため息をつく園子に新一の眉がピクリと動く。

 どうやら見当はずれであったのだと、自身に舌打ちする。

「・・・新一君と志保のことよ。ちょっと仲良すぎるんじゃないの?って探りを入れただけよ。」

「なんでまた、そんなことしたんだ?」

「だって、蘭がいるのに志保ばっかりと喋ったり、まるで付き合っているみたいに思えたんだから、仕方ないじゃない!せっかく新一君が帰ってきたんだから、蘭には今までよりも幸せになってほしかったのよ。・・・恋人になったばかりだってのに、こんなのおかしいじゃない・・・」

「はあ?俺と蘭が恋人?・・・なあ、園子。俺たち別に付き合っているワケじゃねえぞ?」

「・・・・・・は?」

「なんで俺たちがそんな風に見えるんだ?今までと対して変わりねえじゃねえか。」

「なに言ってんの?アンタ、蘭のこと好きなんでしょ?告白したくせに今更・・・」

「ああ、そのことか。それならもう無効だ。蘭にはとっくにフラれてるし。」

「はあ?」

「だから、俺はフリーだって!ただの幼馴染み!」

「・・・・・・。」

 新一の語るその現状に園子の思考が瞬時固まる。

 しかし、それが事実だとしたら、今までの自身の行いを振り返ってみると、完全なピエロであることに頬を赤く染めた。

「えええ~!マジで?ちょっと、新一君!なんでそれを早く言わないのよ!」

「べつに聞かれなかったし、てっきり園子も知ってると思ったんだよ。」

「知らないわよ、そんなこと!だって蘭あんなにアンタが帰ってきて幸せそうにしてたし、前と変わらないし!」

「だからさっきも言ったろ?そのことはもうナシだって。」

 あっけらかんとその事実はないと言い切る新一に園子はついに机に突っ伏した。

 そして、蘭の考えていることがわからないと頭を捻る。

「・・・・・・あの子、なに考えてるのかしら・・・?そんな大事なこと、なんで言わないのよ・・・?」

「まあ、蘭のことだから勝手に思い込んでるだろうな、相思相愛だって。どこをどう取ったらそう思うのか理解に苦しむけど、俺はもうそんな気ねえしな。」

 そして、目の前にいるこの男もなにを考えているのかわからず、そっと顔をあげてジロリと睨みつける。

 もっと早く言ってくれればいいのにと思うけれど、志保と親友になれたこともあったので、軽くではあるが。

「・・・じゃあ、なんで蘭のそのことを言わないのよ?アンタもなに考えてんの?」

「これをきっかけにアイツにいろいろと考えてもらおうと思ってさ。今まで周りが気持ちを汲んでいた部分があるから、いい機会だなって。」

「それで、あえて蘭になにも教えないってこと?かなりひどい扱いじゃない?新一君、そのことに全然心痛まないの?」

「まあ、確かにそうだな・・・でもさ?それも俺の蘭への贖罪だと感じてるんだ。」

「・・・・・・そう。わかったわ。」

 もう言う気も失せた園子はその話題を終了させると、次第に蘭から距離をおくようになった。

 庇う気にもならず、志保といることを望み、彼女と行動を共にした。

 思った以上に心地いいその居場所に二人はいい関係を保ち、新一も自然と入り込む。

 周りにいたクラスメイトたちも次第に事情を知るのだった。





◇◆◇◆◇


 そうこうしているうちに、園子が距離をおいていることに気づくようになった。

 あからさまな態度を取ればさすがの蘭も無視できないと判断し、早速声を掛けてその真意を問い詰める。

「ねえ、園子。なんで最近、一緒にいてくれないの?ずっと誘ってるのになんで宮野さんと仲良くしてるのよ?園子は私の親友でしょう?なんで遊びに連れてってくれないのよ?」

 蘭は園子が自身から離れて、転校生である志保ばかり構って、相手にしてくれないことに不満を抱いていた。

 まるでお気に入りのおもちゃを取られた子供のように「なんでなんで」と繰り返す様子に園子は思わずため息を零す。

「・・・心当たりはないの?私が蘭を避ける理由に。」

「なんで園子が私を避けるのよ?私、避けられるようなことしてないし・・・って、それよりも質問に答えなさいよね!なんで宮野さんとばっかり話してんのかって聞いてんの!ちゃんと教えなさいよ!」

 自身の非を認識していない親友に園子は呆れながら、はっきりと言葉に出したほうがいいと思ったが、それでは甘やかし過ぎだと思い直し、再び質問で返した。

「・・・じゃあ、話すけど、どうして新一君のこと言ってくれなかったの?」

「新一?なんのこと?」

 先ほどの教えなさいといった態度とは逆に、新一の名前が出た途端にこれだ。

 一体なんのことなのかわからないといった表情で蘭が問いかけるのを、園子はそれでもすぐに答えを教えない。

 なぜ自分で考えないのか、なぜそう簡単に人に教えてもらおうと思えるのか。

 それが当たり前になっていたことに、実は園子もまだ気づいていなかった。

「告白の返事をしないで、新一君を放っておいたことよ。まさか、もう忘れたなんて言わないわよね?」

「お、覚えてるわよ!」

「それで?蘭は新一君にちゃんと返事をしたの?」

「そ、それは・・・・・・まだ、だけど・・・でも!新一、帰ってきたときに私のこと、宮野さんにちゃんと紹介してくれたし!だから、別に返事をしなくても恋人だったら、わざわざ言う必要もないでしょう!?だって、新一が私を受け入れてくれたんだから!」

「・・・でも、前に新一君からアンタのこと、好きでもないって・・・ただの幼馴染みだって言ってたわよ?返事を放置されたから、もう無効だって。」

「嘘・・・」

「嘘じゃないわよ。私だってびっくりしたけど、新一君本人から聞いたんだから間違いないわよ。自分はフリーで、蘭のことは好きじゃなくなったって、あっさりと吐いたわよ。」

「な、なんでそんなこと言ったの!?新一が告白してくれたのに、どうして!?」

「・・・っ!蘭が新一君の気持ちを蔑ろにして、無視したからでしょう!?好きだって言ってもらったのに、返事もしない挙句、私の忠告も無視したくせに!」

 またしても「なんで」と口に出した蘭に園子は溜まらず言い切った。

 その様子に、ようやく蘭は園子が避けていた理由に気づくのだった。

「忠告って、まさか・・・」

「そうよ・・・私、言ったわよね?早く返事しないとフラれたと思ってしまうって。他の女に取られるって。・・・それなのに『なんで?』なんて、よく言えるわよね。」

「そんな・・・」

 まさか園子が裏切るなんて思わなかった蘭はショックで言葉を失うが、すぐになにかを思い立ったのか項垂れていた顔を上げると衝撃の告白をした。

「ねえ、園子・・・もしかして、宮野さんになにか言われたの?私と新一の仲を壊そうと目論んで、園子を使って私に入れ知恵するように仕向けられたんじゃないでしょうね?」

「はあ?なによそれ、アンタいい加減にしなさいよ!」

「だってそれ以外考えられないじゃない!新一が私を嫌うワケないし、園子だって同じよ!なら宮野さんしか・・・!」

「・・・やめて!!」

 これ以上聞きたくないと、園子が声を荒げたことに蘭は呆然とする。

 それもそのはず、園子のこんな取り乱したところを見るのが初めてのことだったのだ。

 なにがどうなっているのか、意味がわからず戸惑うしかない。

「志保のことを悪く言うのはいくら蘭でも許さないわよ!!」

「なに言ってるのよ、園子。私は別に悪口なんて・・・」

「言ってるじゃない!!なんでわからないのよ!?アンタ、自分がどんなにひどいこと言ってるのか自覚してないの!?」

 本気でわかっていない蘭に園子は怒りで沸騰しそうになっていた。

 これまで喧嘩らしい喧嘩なんてしてこなかっただけに、蘭の自分の非を認めない姿勢に我慢がならなかったのだ。

 蘭のことは、優しくて明るい世話好きな自慢の親友だと思っていた。

 例え新一に対して、多少たりとも邪険にするところがあったとしても、心配させていたことに同性だから理解できるところも多々あった。

 好きだから声を聞きたいし、不安にもなるのもそれだけ相手を想っているからこそのポーズであると。

 だが、目の前にいる彼女の振る舞いはどうなのか?

 厚顔無恥な口調でなにもしてないと言い張り、教えなさいと命令するような言葉に出したのだ。

 ここまで相手に任せっきりで、無責任かつ非常識な子だと思わなかったことに、怒りで震えが止まらない。

 このとき、園子は蘭に対して抱いていた違和感の正体をようやく知ることとなった。

 そう・・・このやりとりは新一が復学するまえに蘭が彼に電話で話していたことに酷似していたのだ。

 ずっと蘭の隣で新一との仲をからかっていたけど、彼がいなくなってしばらくしてから京極と出逢ったことで園子と蘭は、事情は違えども遠距離恋愛といった環境に置かれていた。

 京極は武者修行のために海外へ行き、なかなか逢えない寂しさを抱えていたけれど、いつだって彼のことを想い、蘭と同じようにずっと応援してきた。

 強い男になろうとする京極が頑張っているんだから、園子もそれに見習うように応援するところはしっかりとエールを贈り、甘えられるときにはしっかりと甘えている。

 まあ、湯呑のつもりで贈ったプレゼントを花瓶と勘違いをして写メを送られてきたときはがっくりとしたけれど、いつも感謝されて嬉しそうに微笑んでくれていたのだ。

 彼に対して不満を言わなかったワケでもないが、それはたまにするくらいで。

 そんなお互いが嫌な想いは少ないに越したことはないと園子は思っていたから、恥ずかしいけど嬉しい時は自分の気持ちを隠すことなく伝えていたし、返事もちゃんと返していた。

 それは蘭も同じ想いを抱いているのだと思っていたのに・・・

 蘭は新一を否定するような言葉ばかりをかけて、いつも連絡があれば自分優先で身勝手なことを要求していたのだ。

 きっと、二人の仲を早く取り持つように告白の返事は早めにするべきだと言っていたのは、そんな蘭を傍で見ていたくなかったのだろう。

 無意識に志保の近くにいることを望み、蘭から離れたその本心は、蘭を新一に丸投げして楽になりたかったという事実に愕然とするのだった。

「・・・もうアンタとは親友でいることはできないわ。私達は私達で、お互いに罪を自覚するべきだと思うの。」

「そ、園子・・・?冗談、だよね?」

「・・・人の気持ちを無視するような子と一緒にいるなんて、私はお人好しでもなんでもないわよ?・・・志保といるのは、そんな私の気持ちを志保がちゃんとわかってくれたからよ。私の欠点もちゃんと受け止めてくれた。」

「だからって、こんなことしなくても・・・言ってくれれば、私だって・・・」

「・・・私は何度も言ったわよ?本気で取らなかったのはそっちじゃない。これ以上の責任を押し付けないで。・・・自業自得でしょう?」

 などと捨て台詞を吐き、園子は蘭から背を向けた。

 早く、新一に謝りたい・・・志保に今すぐ逢いたい・・・

 その一心で園子は新一たちの元へ走り出した。

 親友だと思っていた彼女からの拒絶の言葉にショックを受け、蘭は一人ぼっちになってしまうのだった。

プロフィール

みゅう

Author:みゅう
はじめまして!みゅうです!

ネットで同じ趣味を持つ人から小説を勧められて、それをきっかけに前から温めていた文章を元に作成、二次元ストーリーを書き始めました。
初めてのブログ開設で更新はかなり遅いと思いますが、もしよろしければお付き合いいただけると嬉しいです。

小説が主ですが、たまに日々の出来事も書くつもりです。

なお、小説はみゅうが作ったものなので原作者や出版社は一切関係ないので、ご注意ください。

みゅうの秘密基地へどうぞ!

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