グッバイ・マイベストフレンド

『さよなら、大好きな人』の続きになります。

前回にもお知らせしておいた、新一君だけが幼馴染みのままの感情でいることをようやく三人が知ります。

それによって、反応する彼女たちのその後は・・・?

あいかわらず、全体的に蘭に優しくないお話であり、指摘も多いのでタグをつけさせて頂きます。

彼女のファンのかたは閲覧をお控えください。

最後までお付き合いいただけると恐縮です。





グッバイ・マイベストフレンド


 志保が日直で席を外していると、最近になって仲良くなった園子が教室に戻ってくるのを待ちわびていた。

 その横で女二人の親しさに内心で複雑な気分になる男が一人。

「なあ、園子・・・」

「ん?なーに、新一君?」

 機嫌よくこちらを向く園子に新一はつい本音を零した。 

「最近、宮野とやけに仲がいいよな?お前ら、なにかあったのか?」

「え?」

「だって、アイツなんにも言わねえし、前に園子が宮野に喧嘩をふっけたことがあっただろう?そのときにもしかして、逆にやられたとか・・・」

「・・・なに?その推理・・・全然違うわよ。」

 はあ~っと大袈裟にため息をつく園子に新一の眉がピクリと動く。

 どうやら見当はずれであったのだと、自身に舌打ちする。

「・・・新一君と志保のことよ。ちょっと仲良すぎるんじゃないの?って探りを入れただけよ。」

「なんでまた、そんなことしたんだ?」

「だって、蘭がいるのに志保ばっかりと喋ったり、まるで付き合っているみたいに思えたんだから、仕方ないじゃない!せっかく新一君が帰ってきたんだから、蘭には今までよりも幸せになってほしかったのよ。・・・恋人になったばかりだってのに、こんなのおかしいじゃない・・・」

「はあ?俺と蘭が恋人?・・・なあ、園子。俺たち別に付き合っているワケじゃねえぞ?」

「・・・・・・は?」

「なんで俺たちがそんな風に見えるんだ?今までと対して変わりねえじゃねえか。」

「なに言ってんの?アンタ、蘭のこと好きなんでしょ?告白したくせに今更・・・」

「ああ、そのことか。それならもう無効だ。蘭にはとっくにフラれてるし。」

「はあ?」

「だから、俺はフリーだって!ただの幼馴染み!」

「・・・・・・。」

 新一の語るその現状に園子の思考が瞬時固まる。

 しかし、それが事実だとしたら、今までの自身の行いを振り返ってみると、完全なピエロであることに頬を赤く染めた。

「えええ~!マジで?ちょっと、新一君!なんでそれを早く言わないのよ!」

「べつに聞かれなかったし、てっきり園子も知ってると思ったんだよ。」

「知らないわよ、そんなこと!だって蘭あんなにアンタが帰ってきて幸せそうにしてたし、前と変わらないし!」

「だからさっきも言ったろ?そのことはもうナシだって。」

 あっけらかんとその事実はないと言い切る新一に園子はついに机に突っ伏した。

 そして、蘭の考えていることがわからないと頭を捻る。

「・・・・・・あの子、なに考えてるのかしら・・・?そんな大事なこと、なんで言わないのよ・・・?」

「まあ、蘭のことだから勝手に思い込んでるだろうな、相思相愛だって。どこをどう取ったらそう思うのか理解に苦しむけど、俺はもうそんな気ねえしな。」

 そして、目の前にいるこの男もなにを考えているのかわからず、そっと顔をあげてジロリと睨みつける。

 もっと早く言ってくれればいいのにと思うけれど、志保と親友になれたこともあったので、軽くではあるが。

「・・・じゃあ、なんで蘭のそのことを言わないのよ?アンタもなに考えてんの?」

「これをきっかけにアイツにいろいろと考えてもらおうと思ってさ。今まで周りが気持ちを汲んでいた部分があるから、いい機会だなって。」

「それで、あえて蘭になにも教えないってこと?かなりひどい扱いじゃない?新一君、そのことに全然心痛まないの?」

「まあ、確かにそうだな・・・でもさ?それも俺の蘭への贖罪だと感じてるんだ。」

「・・・・・・そう。わかったわ。」

 もう言う気も失せた園子はその話題を終了させると、次第に蘭から距離をおくようになった。

 庇う気にもならず、志保といることを望み、彼女と行動を共にした。

 思った以上に心地いいその居場所に二人はいい関係を保ち、新一も自然と入り込む。

 周りにいたクラスメイトたちも次第に事情を知るのだった。





◇◆◇◆◇


 そうこうしているうちに、園子が距離をおいていることに気づくようになった。

 あからさまな態度を取ればさすがの蘭も無視できないと判断し、早速声を掛けてその真意を問い詰める。

「ねえ、園子。なんで最近、一緒にいてくれないの?ずっと誘ってるのになんで宮野さんと仲良くしてるのよ?園子は私の親友でしょう?なんで遊びに連れてってくれないのよ?」

 蘭は園子が自身から離れて、転校生である志保ばかり構って、相手にしてくれないことに不満を抱いていた。

 まるでお気に入りのおもちゃを取られた子供のように「なんでなんで」と繰り返す様子に園子は思わずため息を零す。

「・・・心当たりはないの?私が蘭を避ける理由に。」

「なんで園子が私を避けるのよ?私、避けられるようなことしてないし・・・って、それよりも質問に答えなさいよね!なんで宮野さんとばっかり話してんのかって聞いてんの!ちゃんと教えなさいよ!」

 自身の非を認識していない親友に園子は呆れながら、はっきりと言葉に出したほうがいいと思ったが、それでは甘やかし過ぎだと思い直し、再び質問で返した。

「・・・じゃあ、話すけど、どうして新一君のこと言ってくれなかったの?」

「新一?なんのこと?」

 先ほどの教えなさいといった態度とは逆に、新一の名前が出た途端にこれだ。

 一体なんのことなのかわからないといった表情で蘭が問いかけるのを、園子はそれでもすぐに答えを教えない。

 なぜ自分で考えないのか、なぜそう簡単に人に教えてもらおうと思えるのか。

 それが当たり前になっていたことに、実は園子もまだ気づいていなかった。

「告白の返事をしないで、新一君を放っておいたことよ。まさか、もう忘れたなんて言わないわよね?」

「お、覚えてるわよ!」

「それで?蘭は新一君にちゃんと返事をしたの?」

「そ、それは・・・・・・まだ、だけど・・・でも!新一、帰ってきたときに私のこと、宮野さんにちゃんと紹介してくれたし!だから、別に返事をしなくても恋人だったら、わざわざ言う必要もないでしょう!?だって、新一が私を受け入れてくれたんだから!」

「・・・でも、前に新一君からアンタのこと、好きでもないって・・・ただの幼馴染みだって言ってたわよ?返事を放置されたから、もう無効だって。」

「嘘・・・」

「嘘じゃないわよ。私だってびっくりしたけど、新一君本人から聞いたんだから間違いないわよ。自分はフリーで、蘭のことは好きじゃなくなったって、あっさりと吐いたわよ。」

「な、なんでそんなこと言ったの!?新一が告白してくれたのに、どうして!?」

「・・・っ!蘭が新一君の気持ちを蔑ろにして、無視したからでしょう!?好きだって言ってもらったのに、返事もしない挙句、私の忠告も無視したくせに!」

 またしても「なんで」と口に出した蘭に園子は溜まらず言い切った。

 その様子に、ようやく蘭は園子が避けていた理由に気づくのだった。

「忠告って、まさか・・・」

「そうよ・・・私、言ったわよね?早く返事しないとフラれたと思ってしまうって。他の女に取られるって。・・・それなのに『なんで?』なんて、よく言えるわよね。」

「そんな・・・」

 まさか園子が裏切るなんて思わなかった蘭はショックで言葉を失うが、すぐになにかを思い立ったのか項垂れていた顔を上げると衝撃の告白をした。

「ねえ、園子・・・もしかして、宮野さんになにか言われたの?私と新一の仲を壊そうと目論んで、園子を使って私に入れ知恵するように仕向けられたんじゃないでしょうね?」

「はあ?なによそれ、アンタいい加減にしなさいよ!」

「だってそれ以外考えられないじゃない!新一が私を嫌うワケないし、園子だって同じよ!なら宮野さんしか・・・!」

「・・・やめて!!」

 これ以上聞きたくないと、園子が声を荒げたことに蘭は呆然とする。

 それもそのはず、園子のこんな取り乱したところを見るのが初めてのことだったのだ。

 なにがどうなっているのか、意味がわからず戸惑うしかない。

「志保のことを悪く言うのはいくら蘭でも許さないわよ!!」

「なに言ってるのよ、園子。私は別に悪口なんて・・・」

「言ってるじゃない!!なんでわからないのよ!?アンタ、自分がどんなにひどいこと言ってるのか自覚してないの!?」

 本気でわかっていない蘭に園子は怒りで沸騰しそうになっていた。

 これまで喧嘩らしい喧嘩なんてしてこなかっただけに、蘭の自分の非を認めない姿勢に我慢がならなかったのだ。

 蘭のことは、優しくて明るい世話好きな自慢の親友だと思っていた。

 例え新一に対して、多少たりとも邪険にするところがあったとしても、心配させていたことに同性だから理解できるところも多々あった。

 好きだから声を聞きたいし、不安にもなるのもそれだけ相手を想っているからこそのポーズであると。

 だが、目の前にいる彼女の振る舞いはどうなのか?

 厚顔無恥な口調でなにもしてないと言い張り、教えなさいと命令するような言葉に出したのだ。

 ここまで相手に任せっきりで、無責任かつ非常識な子だと思わなかったことに、怒りで震えが止まらない。

 このとき、園子は蘭に対して抱いていた違和感の正体をようやく知ることとなった。

 そう・・・このやりとりは新一が復学するまえに蘭が彼に電話で話していたことに酷似していたのだ。

 ずっと蘭の隣で新一との仲をからかっていたけど、彼がいなくなってしばらくしてから京極と出逢ったことで園子と蘭は、事情は違えども遠距離恋愛といった環境に置かれていた。

 京極は武者修行のために海外へ行き、なかなか逢えない寂しさを抱えていたけれど、いつだって彼のことを想い、蘭と同じようにずっと応援してきた。

 強い男になろうとする京極が頑張っているんだから、園子もそれに見習うように応援するところはしっかりとエールを贈り、甘えられるときにはしっかりと甘えている。

 まあ、湯呑のつもりで贈ったプレゼントを花瓶と勘違いをして写メを送られてきたときはがっくりとしたけれど、いつも感謝されて嬉しそうに微笑んでくれていたのだ。

 彼に対して不満を言わなかったワケでもないが、それはたまにするくらいで。

 そんなお互いが嫌な想いは少ないに越したことはないと園子は思っていたから、恥ずかしいけど嬉しい時は自分の気持ちを隠すことなく伝えていたし、返事もちゃんと返していた。

 それは蘭も同じ想いを抱いているのだと思っていたのに・・・

 蘭は新一を否定するような言葉ばかりをかけて、いつも連絡があれば自分優先で身勝手なことを要求していたのだ。

 きっと、二人の仲を早く取り持つように告白の返事は早めにするべきだと言っていたのは、そんな蘭を傍で見ていたくなかったのだろう。

 無意識に志保の近くにいることを望み、蘭から離れたその本心は、蘭を新一に丸投げして楽になりたかったという事実に愕然とするのだった。

「・・・もうアンタとは親友でいることはできないわ。私達は私達で、お互いに罪を自覚するべきだと思うの。」

「そ、園子・・・?冗談、だよね?」

「・・・人の気持ちを無視するような子と一緒にいるなんて、私はお人好しでもなんでもないわよ?・・・志保といるのは、そんな私の気持ちを志保がちゃんとわかってくれたからよ。私の欠点もちゃんと受け止めてくれた。」

「だからって、こんなことしなくても・・・言ってくれれば、私だって・・・」

「・・・私は何度も言ったわよ?本気で取らなかったのはそっちじゃない。これ以上の責任を押し付けないで。・・・自業自得でしょう?」

 などと捨て台詞を吐き、園子は蘭から背を向けた。

 早く、新一に謝りたい・・・志保に今すぐ逢いたい・・・

 その一心で園子は新一たちの元へ走り出した。

 親友だと思っていた彼女からの拒絶の言葉にショックを受け、蘭は一人ぼっちになってしまうのだった。

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さいあく・・・(-_-;)

ただ今、家族が続けてインフルエンザになり、その上私も熱を出して体調を崩しています。

高熱じゃないから大丈夫だと思うけど、微熱がずっとあるし・・・

頭痛や関節痛、倦怠感とさいあくな感じです。

そんなわけでしばらくブログはお休みにしますね。

支部の騒ぎもあるし、ちょっと体をゆっくりさせます。

コメントのレスはまた後程書きますので、申し訳ありません(+_+)


本ブログ 作成者 みゅう

憎悪、それは権利を主張させる

期間がかなり空きましたが、『恋物語』の続きになります。

今回はオリキャラを主にした事件の彼の言い分を描いてみました。

毛利家の心境&新一君サイドの事情。

物語に連れて、蘭ちゃんの扱いがひどくなっていきますので、彼女のファンのかたはご覧にならないほうがいいと思います。

苦情は受け付けませんので、悪しからず。

最後までお付き合いいただけると恐縮です。





憎悪、それは権利を主張させる


 あれから、毛利家と幸村家の事件は結局、お互いの子供の未来のために示談という形で幕を下ろされた。

 佐藤の予想通りに一樹の両親が小五郎と蘭へ訴えを起こしたこともそうだが、例え弁護士を変えた場合でも双方の恋愛事情はともかく、小五郎の一樹に対する傷害罪を盾に動けば幸村家のほうに有利であったこと。

 そして、なによりそのことで蘭が小五郎に犯罪者の烙印を押してほしくないと望んだことで、それを聞いた小五郎と英理はじっくりと話し合い、不本意ながらにも一樹に怪我をさせたことを謝罪した。

 まあ、蘭自身が一樹のことを何度も口にしたくないというのが一番の理由だが・・・

 今回の件は被害者と加害者という立場も曖昧なため、どちらも悪いとは言い切れず、小五郎も頭に血が上って手を挙げたことを恥じていた。

 本来なら、蘭の話を聞いて冷静に判断すればそれなりの対応ができたはずなのに、それができなかった親のエゴで事件を起こしてしまったことに小五郎は後悔していたのだ。

 英理も娘が辛い想いをしているときに傍にいてやれなかったこと、自身の仕事の都合や、つまらない理由で家を出て行ったことを反省し、これを機会に探偵事務所へ戻ることを決める。

 幸か不幸かはまだわからないけど、家族全員に課せられた試練だと受け止めて、毛利家はもう一度やり直すことにしたのだ。





◇◆◇◆◇


 一方で、新一は復学して間もない下校時に再び、体調を崩し寝込んでいた。

 途中にある公園でしばらく腰を降ろしていたが、それでも容態は思わしくなく早急に自宅へ帰宅し、今はベッドで横になっている。

 志保の助手として雑用をしていた快斗は診察を終えて、新一の部屋から出たところで声を掛けた。

「志保ちゃん、新一は?」

「・・・眠ってるわ。やっぱり無理があったのね。思った以上に衰弱していってるわ。」

「そっか・・・ねえ、志保ちゃん。新一って・・・」

 ふと気になったことを聞こうとした快斗だったが、途中で踏み止まってしまう。

 さすがに助手という形で新一の傍に居られるようになったものの、想いもまだ告げていない内に知るべきではないと感じていたようだ。

「あ、ごめん。なんでもねえよ。」

「・・・そう。私、調べ物があるからしばらく地下に籠るわね。なにかあったら電話してちょうだい。夜中でも駆けつけるから。」

「うん、わかった・・・あ、でも無理はしないでね?新一もそう言うだろうからさ。」

「・・・・・・黒羽君、貴方って・・・」

「ん?なに?」

「・・・べつに。」

(本当にお人好しね、工藤君が気に入るだけの男だわ。)

 新一もそうだが、快斗も相当のお人好しであることに、志保は似た者同士の彼なら、もし新一の身になにが起きても最後まで見捨てることなどしないだろうと思った。

 そして、お互いが一人になって少し経つと快斗の携帯が鳴り、着信相手を確かめて通話ボタンを押す。

「寺井ちゃん?どうした?」

『もしもし、快斗坊ちゃまですか?急で申し訳ございませんが、頼まれていた彼女の件で、気になる動きがありましたので早めにお知らせをしておこうと思いまして・・・』

 この工藤邸に引っ越してくるときに、新一に対する恋心を見抜かれてしまった快斗は仲間の寺井にもしものためを思って、蘭の調査を頼んでいたのだ。

 彼の口調から、なにやらただ事ではない様子に耳を傾ける。

「うん・・・うん・・・・・・え?それってマジで!?・・・わかった。教えてくれてありがとな、寺井ちゃん。」

『いえいえ、これぐらいことは朝飯前ですから。この寺井、快斗坊ちゃまのためになるというのならなんでも致しますよ。』

「ほんとに変わらねえな。もう廃業したっていうのに、その手腕。」

『全ては貴方がたをお守りするためですよ。お役にたてて光栄です。詳しいデータは快斗坊ちゃまのPCに送っておきましたので、ご覧になってください。幸村家のこともしっかりと調べておきましたので。』

「じゃあ、後でみておくよ。・・・うん、またな。」

 そして、快斗が早速、新一の隣の部屋の自室へ行き、PCを立ち上げて『毛利家と幸村家による示談済・調査票』の内容を開く。

 大雑把なことは先ほど聞いていた為、確認するようにそれを読んでいくと・・・

「あ~あ、厄介なことになってるし・・・どうして、こうトラブルを起こしちゃうかな~?あの娘さんは~?」

 PCに送られてきたデータを見終わった瞬間に、出た感想だった。

 せっかく、ボーイフレンドといい感じになってきたというのに、上手く断ることもできず煽るようなことをしたのだろうと思う。

 だけど、示談に持っていったのは彼らにしては賢明な判断であることに快斗はそういう意味で逃げるのが得意な親子だなと変に感心してしまう。

 それもそのはず、幸村一樹の調査票をしっかり読んでいれば、納得せざるを得なかったからだ。

 どうやら、一樹の容姿はイケメンの部類に入るらしく、学校での評判もよくて、人当たりのいい気さくな生徒だとそれなりの人気があり、彼を貶す者はほとんどおらず、逆に密かにファンクラブがあるくらいだった。

 そんな彼が例え失恋したとしても、強引なことはしないだろうと断言されたり、今まで異性と付き合ったことのないと親しい友人からも証言があり、蘭の主張が狂言ではないかと言う声があったのだ。

 事実、一目惚れした他校の女子生徒・・・つまり蘭に告白したけど断られて、それでもダメ押しで連絡先を交換したら、それに対応してくれたことを彼の友人たちは本人から聞いていたらしい。

 健気に電話やメールをして、好きな人にアプローチをし続ける一樹に対してひどい扱いを受けたのは、蘭の腹いせのではないかと非難されたのだ。

 だけど、快斗はそんな周りの声を聞きながらも、一樹にはもう一つの顔があることにふと気づく。

「なんか、この二人って・・・すごく似てるような気がする。もしかして、コイツら同類の人間じゃねえのか?毛利蘭と幸村一樹・・・学校内の人気者で、神聖化されてる感じがあるし、そういうのって周りが大袈裟にしているから、当人は内心なに考えてるかわかんねえもんなあ~。」

 それを自覚しているか、してないかでは定かではないが、蘭の場合は完全に無自覚・無意識であるのは傍でみていればわかることだった。

 新一に依存している蘭とクラスメイトたちと普通に付き合っている一樹。

 異性慣れしていないようで、実は慣れているのはきっと一樹のほうだろう。

「両親二人揃って有名な弁護士で、お金持ちの坊ちゃん育ちの一人っ子。兄妹がいない分、愛情を一人占めできたからその辺の純粋さはしっかりと持ってそうだな・・・でも侮れないぜ、この男・・・普段は無自覚・無意識みたいだけど、いざ自分が不利な場面になったら意識して周りを利用して、傷つかないように動いてる・・・はあ~、感心していいものかどうか・・・けど、こういうヤツに限って男女関係なくモテるんだよなあ・・・」

 さすがはIQ400の頭脳を持つだけあって、一樹の人物像を的確に読んでいる。

 佐藤に事情聴取を受けたときの対応がまさしくその通りで、どうすれば自分が有利になって、相手を懲らしめることができるのかちゃんと理解していたのだ。

 一樹は交換条件のところは嘘をついたけど、それ以外は嘘をついていない。

 蘭のことだって、もう付き合う気はなくなったけど、好きだったのは事実だし、忘れてもらおうと尽くしていた様子は周りの生徒たちも知っている。

 まあ、小五郎から暴行を受けたのは予想外だったけど、あのときは下校途中にいきなり背負い投げをやられたのだ。

 さらに馬乗りになって、ボコボコにされそうなところを近くにいた男性が止めてくれたから軽くで済んだし、きちんと謝罪もされた。

 50:50とまでいかないかもしれないけれど、どちらかと言えばすっきりできたのは一樹のほうなのだから。

『嫌な気持ちは前面に出さないで極力抑えて、その代わり相手を想うように仕向ければ、同情の声は必ず出てくるし、そこを重点的におけば示談もできる。やり逃げみたいな感じもなくなるし、気分的に一石二鳥~♪』

 というのが、一樹の考えであった。

 快斗は一樹よりも蘭がこれをきっかけに暴走しないかと危惧してしまう。

 そして、それはやがて形に現れ出した。

 蘭が前のように気軽に新一に話しかけてきたのだ。

「ねえ、新一。放課後ちょっと付き合いなさいよ。最近新一とあんまり話せてないし・・・いいでしょう?」

 あいかわらずの上から目線で断らないかのような態度に、少しだけならといいと言われた蘭は嬉しそうに微笑む。

 約束通りに新一の身体に配慮していたのだが、徐々に遠慮しなくなっていき、あろうことかリフティングなら大丈夫じゃないかとサッカーボールを見せてきたのだ。

「いや、やりたいのは山々だけど宮野に止められてるからな・・・わりぃけど・・・って、おい!」

「なに辛気臭い顔してんのよ~、ほらしっかり支えないとボール逃げちゃうわよ。」

「だからって・・・」

 そう言いながらも慣れ親しんだ身体が自然とボールを転がしてしまったことで、我慢してきたものが溜まっていたせいなのか心なしか顔が明るい。

 ぐるりと周った頃に、クラスメイトのサッカー部の男子が声を掛けたことで数分も至らなかったが、やはり危惧していたことが起きた。

 膝を床について、頭を抱えだしたのだ。

 すぐに志保に来てもらって、なんとか処置はできたものの、蘭への非難は強かった。

「貴女・・・一体なに考えてるの?」

「わ、私はただ・・・新一の為を思って、しただけで・・・」

「工藤君がサッカーボールに触れて、なにもしないっていう選択肢があるのならまだわかるわ・・・だけど、それがないのは貴女だったらわかるはずよね?幼馴染みなんだから。」

「だって可哀想じゃない!好きなことができないって言うんなら、できることだけでもして笑えれば気持ちも明るくなるでしょう?試合をさせたんじゃないんだから別にいいじゃない!」

「・・・もう一度説明するわね。工藤君に運動は禁止、日常生活で行う程度の動きならリハビリとして効果が出るけど、それ以外のことは彼にとって危険なの。だから私は医師として体育の授業にドクターストップをかけたわ。・・・最初に伝えたわよね?特に貴女には二度も。」

 その事実になにも言えなくなる蘭は悔しさから志保を睨みつけた。

 独占欲の中に憎悪の色がじわじわと膨れ上がり、もう止めることができない。

 執拗に付き合うように言われた新一はそんな蘭を疑問に思い、問いかける。

「なあ、蘭。俺よりも彼氏誘ったほうがいいじゃねえのか?勘違いされてとばっちりを食わされるのは勘弁だぞ?」

「な、なによ!そんなの新一に関係ないでしょう!せっかく新一が帰ってきたんだから一緒のときは彼のことは口に出さないでよ!」

「ん?喧嘩でもしたのか?だったら尚更・・・」

 すると、自分の言い分が通じないと思った蘭が近くにあった電柱にヒビを入れたことでそれ以上言わせないようにしたのだ。

「・・・聞こえなかったかしら?」

「い、いや・・・」

 蘭がにっこり笑うのとは逆に、新一の顔色が青くなる。

 今までなら謝って、機嫌を取っていたはずの行為もなぜ急に攻撃的になったのかという疑問のほうが大きい。

 それを当たり前だと思っている蘭だが、新一には不信を抱かせる要因となるのだった。

 
 憎悪、それは権利を主張させる――――

 
 明らかに違う蘭の新一に対する態度。

 三度目の忠告も耳障りな不協和音として排除し、己の欲望のままに動き始める。

 彼女の中で、権利を飛び越えて憎悪という思い込みが芽生え始めていた。

IF×IF 過ちては改むるに憚ること勿れ

随分前にブログでリクエストを頂いていた、別のIFのお話です。

京極さんが間に合った場合や、間に合わなかった場合とは全く違う彼らの運命は?

「しんいち」に過剰反応しすぎる彼女の「くどうしんいち」症候群。

本能的かつ無意識にコナン君を新一君だと認識し、同じ態度を取る彼女の依存性の高い症状です(^^♪

以前に途中からIFとして別バージョンに分けた部分が少し重なっていますが、お気軽にどうぞ。

あいかわらず蘭に優しくないお話です。

彼女のファンのかたは閲覧をお控えください。

苦情は受け付けませんので、あしからず。


※※※※※


投稿が遅れて、申し訳ありません!!

ただ今、仕事もプライベートもかなり忙しくて、なかなかシリーズの続きができず大変参っています(;´・ω・)

ブログのレスも、もう少し待っていただけると嬉しいですね(^^♪





IF×IF 過ちては改むるに憚ること勿れ


 園子が京極からの連絡を受けて、デートに向かった後。

 蘭は複雑な気持ちで家路に着こうとしていた。

 だが、ある場所で不機嫌の原因にもなっている幼い姿を目に触れて、早足で前を進めていくと、コナンが携帯で「しんいち」と口にしているのを聞いてしまう。

 自身の知らない間に連絡を取っていることや、見たことのない女性が「しんいち」と仲良くしている様子を感じ取ると、今まで溜めていたものが湧き出るような感覚になった。

 コナンに問い詰めても明らかに楽しそうに話してただけでなく、目の前にいる女が「しんいち」と助けを請うように呟いたことで、蘭の怒りは頂点を達した。

 この女が自身から新一を奪ったのだと理解すると、自然と構えに入る。

 だが、その瞬間。

「いっけえー!!」

 コナンの声が発せられると後ろの壁へ、サッカーボールを蹴り上げられたと思ったら、その反動を利用して、蘭の元に向かってきた。

 咄嗟に避けよう動いたが、僅かな差で身体に当たったせいか動きを封じられてしまう。

「灰原、頼む!」

「わかったわ!」

 阿吽の呼吸で携帯を取り出して、警察に連絡を入れているのを知ると、蘭はどうしてなのかわからずに叫びだした。

「な、なんでよ?私がなにをしたっていうの?新一を奪ったこの女を成敗しようとしただけじゃない!」

 明らかに悪いのは朱美で、蘭自身の非は一切ないと言わんばかりの態度にコナンと哀は呆れたかのように息を零した。

「なに言ってるの?蘭姉ちゃん?どう考えても、空手を使おうとした蘭姉ちゃんのほうが悪いに決まってるじゃない。」

「江戸川君の言う通りね。どんな事情があるにせよ、空手家である貴女が一般人に攻撃するのはタブーなのは、武道を行う者なら当然よ。そんな常識さえも忘れたのかしら?」

 小学生である二人にわかって、高校生である蘭にわからないなんてあり得ないと正論で責められてしまうが、蘭は開き直るかのように反論した。

「それがなんだって言うのよ?実際にはなにもなんだから、意味はないわ。新一だって、ずっと避けてたんだから同じよ。」

 常識はあくまで怪我を負わせたり、攻撃に当たらなければそれは無意味だと言うのだ。

 そんな非常識な蘭に、コナンは今まで咎めてきた全てが伝わってこなかったことに、脱力してしまう。

 反省の色を見せない幼馴染がこれほど自分勝手で人を思い遣らない性格に、軽蔑の表情を見せる。

 哀もコナンの想いを感じ取っていると、蘭の動向が気になった京極がこちらに向かっているのを目にして、そっとアイコンタクトを取り、お互いに首を軽く縦に振った。

「コナン君!なにがあったんですか?」

 蘭が不自然な格好で身体を押さえているのを見つけると、京極は危惧していたことが起きたのではないかと問いかけた。

「うん、実はね・・・」

 事細かに蘭が朱美にしようとした言動を伝えた。

 誤解を解こうと話し掛けても、聞く耳を持たずに攻撃する蘭を防御したことも。

 すると、コナンが詳しく伝えてくれたその真意を読み取り、問いかけた。

「そうだったんですね。よくわかりました。私に教えてくれたということは、報告してもいいと?」

「うん。僕が言っても説得力ないし、京極さんならお願いできると思って・・・」

「それなら、私に任せてください。先ほど園子さんからこの前の事件のことも聞いたばかりなので、きっと本部も了承してくれると思います。」

「小五郎のおじさんには、僕から話すよ。・・・えっと、それと朱美さんなんだけど・・・彼女に迷惑をかけるようなことは、して欲しくないんだ・・・」

 ただでさえ怖い目に遭わせたのだから、これ以上関わるのはさすがに悪いと訴えると、京極もそれに賛同する。

 幼いながらにも蘭より分別のあるコナンの勇気に、そっと頭を撫でた。

 さすが、キッドキラーとして世に馳せるだけの能力の持ち主であることに感心した。

「勿論、その辺のサポートはきちんとしますので、安心してください。早速、報告に行ってきますね。・・・園子さん、よろしいですか?」

 遅れてきた園子は蘭がしてしまったことを即座に察知すると、京極の言葉にコクリと頷く。

 それが親友に対する誠意であり、自身の贖罪になればと願いながら。

 一方で、蘭はこんな状況の中で誰も味方にならない理不尽さに唇を噛みしめていた。

 確かに、空手でちょっと懲らしめてやろうと思ってしまった。

 そのことに関して、否定するつもりはない。

 散々、待たされているのに全然連絡も寄越さず、戸部の事件で最後まで自身を庇わなかった二人に怒りを覚えていたのは事実なのだから。

 でも、それは叶うことはなく、コナンが蹴ったサッカーボールの所為でタイミングを逃してしまい、結果この女に当たることはなかったし、新一のことも聞き逃してしまった。

 どう考えても、一人ぼっちにさせたのは新一とコナンなのに、なぜ皆して否定するような言葉ばかり掛けられるのか。
 
 普段、楽観的で物事を深く考えないくせに、こういったことに対しては頭が働くのだ。

 今までロクに叱られることもせず、逆に自堕落な父親を叱ってきた環境の所為なのか、蘭は小五郎や身内同然(と思い込んでいる)のコナンに厳しく、自身にめちゃくちゃ甘い。

 あれだけ小五郎から口うるさく言われても、本心で悪いと思っていない蘭はコナン達の言動が理解できず、再び暴言を吐いた。

「だいたい新一もコナン君もひどいわよ!二人して私を除け者にしてこんな女とイチャイチャするなんて!どうして私ばかり責められなきゃいけないのよ!?悪いのはそっちじゃない!!」

「「「「「・・・・・・。」」」」」

 それでも自分は絶対に悪くないと人の所為にする蘭の思考に言葉を失う。

 ここまで話が通じないと、相手するのもバカバカしくなってくる。

 そういえば、過去にも同じようなことがあったなとコナンは遠い目になった。

 確か、あれは・・・赤木量子と名乗る女子高校生が探偵事務所に訪れたときのことだ。

 その彼女曰く、『自身は新一の恋人であり、連絡が取れない彼に逢いたいから探して欲しい』と、奇妙な言動をしていた人物。

 身に覚えのないその女性に変だと思い、紐解いていけば誘拐事件が起きているのに気づいたのだ。

 そんな中で、蘭一人は彼女の存在が受け入れられず終始不機嫌な顔を露わにし、嫉妬に狂って犯人宅のマンションのドアを自慢の脚で破壊し、その男の顎を打撃してしまう始末。

 大声で「しんいち~!!!」と叫びまくり、見ているこちらのほうが恥ずかしいほどに暴走していた。

 なんとか事件を解決して、逃げたところを執拗に追いかけられていたけれど、博士の協力で誤魔化すことができた。

 しかし、問題はまだ続いていたのだ。

 その誤解を解こうと彼女が再度探偵事務所に訪れていくら説明しても、なかなか理解してくれず、執拗に問い詰め、まるで正妻が愛人に夫を誑かしたのはお前ではないのかという態度を貫いていた。

 そのときはただ怖いとしか思えなかったが、こうして同じようなシチュエーションになり、挙句自身の恋心が覚めたことで、蘭の言動がおかしいことにようやく気づく。

(マジであり得ねえ・・・まだ告ってもない頃だぞ?なのに、あの態度かよ?)

 普通に考えれば、ただの幼馴染みという関係である以上、弁解をする必要もなかったのだ。

 今になって考えれば、蘭の恐怖に耐えられず誤魔化しただけで、新一は別に好意を持っているようなことは言っていない。

 博士が気を利かせてああ言ったのを蘭が勘違いした、というのが正しい気がする。

 結果として蘭の機嫌は直ったけれど、彼女の立場になれば、かなり失礼なことをしたなとコナンは反省した。

(元の姿に戻ったら、一度逢いに行こう。あんな怖い目に遭わせたんだ。ちゃんと顔を見て、謝らないとな。)

 朱美に彼女と同じ想いをさせてはならないと、覚悟を決める。

 簡単に大切な人を傷つけようとした蘭と決別し、コナンは新一としても別れを告げようと・・・

 過ちては改むるに憚ること勿れ。

 人は誰も過ちを犯してしまうものだが、その過ちに気づいたらすぐに改めるべきである。

 悲しみの連鎖は、自らが断ち切ることで彼女たちがずっと笑顔でいられますように祈りを捧げた。





 そして、蘭は捜査一課の刑事に署まで連行された。

 今回の事件は未遂とはいえども、過去の犯人への過剰防衛が次々と明らかにされ、被害届が増えていったのだ。

 それと同時に空手会からも追放され、小五郎と英理も育児放棄をしたことが世間に晒され、毛利家は追い詰められる。

 やがて、新一から決別された蘭が暴走したのは・・・想像に難くないだろう。

BEST PARTNER

ネタをいろいろ考えていた最中に浮かんだコ哀のショートストーリー2本立て。

なんだかよくわからないものができてしまったけれど(特に2ページ目)、暇つぶし程度として読み流してもらえればいいと思います。

1ページ目のコナン君は不憫&愚痴っぽい感じで、2ページ目の彼はサイテーだけど、カッコイイ(?)という感じです。

書いた本人も「?」なので、駄文なのは間違いありません。

できればツッコミは控えめにお願いしたいなと思います。

そして、あいかわらず蘭に優しくないので、彼女のファンのかたは閲覧をお控えください。

苦情は受け付けませんので、悪しからず。

最後までお付き合いいただけると恐縮です。





理不尽極まりない


 幼馴染みの彼女はときどき、勘が鋭いときがある。

 コナンが新一ではないかと疑ったり、失踪事件のときになんとなくコナンが乗っている車じゃないかと察知したり、幼児化する前に二度と逢えないかもと感じたりと。

 でも、一番肝心なところに気づいていない。

 そんな矛盾をコナンは感じていた。

 つい本音がポツリと零れたことに、隣で二人の共通の趣味である美術館のパンフレットを片手に、哀が不思議そうに問いかけた。

「え?それってどういう意味なの?」

「まあ、告白の返事を放っておかれたり、何度帰れないと言ってもわかってくれなかったり、厄介な事件だって言ってんのに『そんな事件他の人に任せておけばいい』とか、じっとしてほしいのに俺の意見を無視してヤバイ場面に首を突っ込んでいくところもそうだな。あと、それから・・・」

「ち、ちょっと待って工藤君。」

 捲し立てるように説明するコナンの言葉に哀は待ったをかける。

「ん?なんだ?」

 まさかそういう話だとは思っていなかったので、冷静になるように一呼吸すると念のために訊ねてみた。

「一応、確認させてもらうけど。貴方、彼女の欠点に気づいてたのね?」

「そうだけど?つーか、気づくっていうよりも疑問に思うのが普通じゃねえのか?あんだけわかりやすい行動していたら、誰でもわかるだろ?」

「・・・そう、ね。なら問題ないわ。それで、工藤君?話を戻すけど、貴方がそう思ってるって伝えたことがあるのかしら?特に告白の件についてなんだけど。」

「いや、伝えてねえけど、アレで充分じゃねえのか?あとはアイツから答えをもらえばいいだけなんだから、俺から催促するっても変な話だろ。それに、なんで二度も告るような真似をしなきゃいけねえんだよ?」

「・・・まあ、それが普通の反応よね。好きだって言ったら、好きだって返してほしいって思うのは。早く返事くれって催促なんてしたら、相手に失礼だわ。下手したらそれで断られることもあるしね。」

「だろ~?なのにアイツ、なーんにも言わねえし、言おうとする素振りもねえ。そのくせもう彼女みたいな振る舞いでいるし、なんか前よりも口調がきつくなってる気がするんだけど・・・俺の気のせいか?」

「・・・いえ、彼女のことだから“みたい”なじゃなくて、“彼女”と認識した上で貴方に接してるのよ。」

「はあ?なんでそうなるんだよ?返事もらってねえのに?」

「貴方なら、もうわかってるんじゃないの?彼女がそれに満足しきってるってことに。だから返事をしなくても構わない。“だって私は貴方から好きだって言ってもらえたんだから、大丈夫”みたいにね?」

「・・・・・・。」

「なにか混乱しているみたいだけど・・・一つずつ話していきましょうか。その後に言った欠点のことも一応確認するけど、こっちも彼女に伝えてるの?危ないことをするなって。」

「そんなの何度も言ってるよ。でもアイツ全然人の話聞こうとしねえし、いっつも『なんでここにいないのよ!大変な目に遭ってんのになんでこんなときまで事件事件なの!?』って言うんだぜ?・・・話を逸らすわ、人の所為にするわ、挙句の果てにコナンの身で俺の悪口を延々と聞かされてみろ?注意したくてもそんな気力なんか残ってねぇよ。それでまた同じことの繰り返しなんだぜ?」

「そ、それはまた・・・ご苦労なことね・・・」

「新一じゃ聞いてくれねえから、コナンとして何度も言ったこともあるけど、全く一緒。『コナン君だって危ないことしてるじゃない』とか『私がいたからコナン君、助かったのよ?』とか、自分が正論だってドヤ顔してくるし・・・あんまり言い過ぎると空手で机をバキッ!だぜ?・・・理不尽としか思えねえか?」

「・・・そうね、同意だわ。」

「なんかさ~?お互いにかみ合っていないっていうか、求めてるものが違いすぎるのか、最近アイツと話すの億劫なんだよ・・・好きだって想うのは間違いねえのに、嫌になるってのは一体どういうものなのか、わかんなくなってんだ・・・今までこんなことなかったのに、なんでだ・・・?」

「なるほど・・・それで気持ちがモヤつくってワケね。でもね、工藤君?それって全然普通のことじゃないかしら?」

「え?そうなのか?」

「だって、どんなに好きでもここだけはなんか嫌だって思うものでしょう?私だって、貴方の欠点で好きじゃないところもあるし、そうじゃないところもちゃんと持ってるわよ?でも、億劫になるっていうのはちょっと・・・あんまりいいものでは、ないわね・・・」

「・・・・・・そうだな。」

 なにやら思考の世界に行きそうなコナンを呼び戻すために哀はゴホンと咳払いをしてみる。

 すると、それに気づいたようなので、構わず話を続けた。

「・・・で、次行くわよ?彼女がなかなか貴方の事情を理解してくれないこと、ね。これは・・・きっと何度同じこと言っても、無理としか思えないわ。」

「・・・やっぱり、灰原もそう思うのか?」

「・・・ええ、貴方の前で彼女を悪く言うのは心苦しいんだけど・・・」

「いや、構わねえよ。俺が相談してんだ。ちゃんと聞きたいし、言ってくれねえか?」

「そう・・・・・・なら、遠慮なく言うわよ?彼女、理解しないっていうよりも理解しようと思っていないというのが正しい気がするの。貴方はちゃんと言ったのよね?厄介な事件で帰れないと、待っててほしいと、彼女に。」

「ああ、アイツにしっかりと言ったよ。」

「でも、彼女はそれを拒絶し続けた。・・・つまり、そういうことよ。」

「・・・・・・なるほど、だからなのか。」

「そう、理解するしないの問題じゃないのよ。これは彼女自身の問題だから、いくら貴方が注意しても聞かないのは当然だわ。だって、彼女がそれを受け入れなければどうにもならない。」

「・・・・・・。」

「まあ、貴方が心配するのはわからなくもないけど、あんまり気にし過ぎると博士みたいな頭になるかもしれないから、程々にね?」

「え・・・?あ、そうだな・・・でも、あの無謀なところはさすがにヤバイと思うんだ。俺なら避けられるけど、アイツ犯人相手に容赦ねえし・・・ほら、ケビン吉野をボコボコして、もう少しで危なかったらしいじゃねえか?灰原、お前見てたんだろ?」

「ええ・・・助かったとはいえ、あれはちょっとやり過ぎだったわね。園子さんなんかずっと気絶してたから、なにも知らずに彼女を誉めるようなこと言っちゃってたし・・・そうそう、貴方もかなり無茶したんですって?」

「ああ、お前たちがせっかく照らしてくれた光を取り戻すにはあれしか方法がなかったからな。アイツにも事前にFBIの人が行くからすぐにそこから逃げろって言ったんだけど・・・」

「吉田さんが人質になって、犯人に向かって行ったのよね・・・彼女。」

「歩美を助けるためにってアイツが主張するのもわかるけど、暗闇でなにができたんだっていう怒りもあってさ・・・あの後、新一として連絡したけど、逆ギレされて・・・」

「そして、振り出しに戻る・・・ってことね。」

 はあ~っと二人揃って、ため息を吐いてしまう。

 延々と続くループにさすがに同情するしかなかった。

 きっと、彼女は周りに迷惑をかけていることに気づいていないのだろう。

 それもそのはず、蘭は自分に都合のいいものしか勘が働かないのだから。

 コナンと哀はどうすべきなのかわからず、頭を抱えるしかなかった。





※※※※※


不意打ちなアイの告白


「俺、今の蘭とお前が欲しいんだ。」

 それは、唐突に起きたある日常の一コマだった。

 コナンが相棒である彼女に愛の告白をしたのだ。

 しかも、かなり厚かましいともいえるものを。

「え・・・?」

「いきなり、わりぃ。でも、それが俺の本心なんだ。」

「蘭さんには彼女として、私には相棒としていてほしい・・・なんて、随分と自分勝手なことね。」

 いきなりなにを言い出すのかと思えば、哀はそれに相応しい言葉を投げかける。

「いや、少し違うよ。」

 だが、コナンは即座に否定した。

「なにが違うのよ、結局は人のこと都合のいい存在として傍に置きたいだけなんでしょう?」

「正確には、蘭姉ちゃんと灰原との関係が心地いいんだ。」

「それって・・・」

 江戸川コナンと工藤新一。

 どちらも切り離せない自分が求める相手が今の蘭と哀だと知り、少しばかり嬉しさを感じてしまう。

 多分、勘違いでなければ、彼は自身に対して好意を持っている。

 ずっと傍にいてほしいと思えるくらいの存在として。

「ああ、蘭には恋愛感情じゃなくて家族愛として好きなんだってわかったんだよ。ずっとそういう意味だと思ってたけどコナンになってから気づいた。お互いに欠けたものを補って傍にいられる、そんな関係に。・・・でも、灰原はそれだけじゃ足りないって思ったんだ。」

「工藤君・・・」

 予想以上の愛の告白だったことに思わず胸の鼓動が高鳴る。

 しかも愛情が薄れたわけではない、種類が変わっただけの彼女のことも心配ないと言わんばかりだ。

「なあ、灰原。俺、お前に俺のワトソンだけじゃなく、アイリーンにもなってほしいんだ。俺と、ずっと一緒に生きてくれないか?」

 それは歓喜なんて言葉では言い表せないほどに、哀の心に響いたのだ。

 プロポーズとも呼んでもおかしくない、彼らしいストレートな告白。

 つい照れてしまうのは大目にみてほしいものだ。

「・・・・・・バカね。なんで、私なんかを選ぶのよ・・・可愛らしい彼女がいるのに、なんで・・・?」

「・・・しかたねえだろ?だって、オメーと出逢っちまったんだから。惚れないなんて選択肢なんかねえよ。蘭は・・・なんつーか、待たせて辛い想いをしているからっていう義務感のほうが大きいんだよ。例え元の姿に戻っても、アイツが俺を理解してくれると到底思えない。恋人になりたいんじゃない、ただ恋人らしいことをして、自分が満たさればそれでいいんじゃないかって・・・だから俺、今まで蘭に告白しなかったんだなって思うんだ・・・」

「・・・後悔してるの?彼女に告白したこと。」

「ん~?後悔、とはちょっと違うと思うな。ただ、もう少し上手く立ち回れていたらなあ、とは思うけど。」

「確か、させられたとかって言ってたけど、もし・・・もしもよ?」

「なんだ?」

「もし、そのとき彼女を泣かせたとしても貴方は告白しなかった?」

「いや・・・きっと告白めいたことは言ったと思う。アイツを泣かせたくないのは変わらねえし・・・嘘をつくことだけはできないと思うよ。どんな感情かわかっていなくてもアイツを好きだっていうのは事実だからな。・・・なんて、アイツから返事をもらわなくても平気なのは、実は俺のほうだったんだよ。」

「工藤君・・・?」

「ま、要はアイツも俺も、自分勝手だってことだ。」

「そう・・・・・・じゃあ、お互い様ってことね。なら片方だけが責めるのはフェアじゃないわね。」

「そうそう。だからもういいんだよ、これで。」

「ずるい人ね・・・工藤君は。」

「けど、アイツがこのままでいるのを望んでいるのなら、なにも問題はないだろ?最悪コナンのままでいても俺は・・・それでいいと思ってる。新一はもうあの頃に戻れないんだよ。」

「そうね・・・・・・私だってあの頃の自分に戻れないし、戻りたくないわ。今の哀でも幸せを感じることはできるし、この居場所は本当に心地がいいもの・・・」

「俺もだよ・・・灰原。」

「・・・・・・な~んて、私も自分勝手よね。人のこと言えないわ。・・・ねえ、工藤君。」

「ん?」

 クスリと笑うと、哀はコナンの耳元に近づく。

 そして、彼女もまた、彼に負けず劣らず愛ある告白を伝えた。

 江戸川コナンと灰原哀。

 運命共同体の二人がこの日を境に、かけがえのない存在になったのは言うまでもないだろう。



プロフィール

Author:みゅう
はじめまして!みゅうです!

ネットで同じ趣味を持つ人から小説を勧められて、それをきっかけに前から温めていた文章を元に作成、二次元ストーリーを書き始めました。
初めてのブログ開設で更新はかなり遅いと思いますが、もしよろしければお付き合いいただけると嬉しいです。

小説が主ですが、たまに日々の出来事も書くつもりです。

なお、小説はみゅうが作ったものなので原作者や出版社は一切関係ないので、ご注意ください。

みゅうの秘密基地へどうぞ!

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