届けよう、恋の歌を

映画『から紅の恋歌』による百人一首になぞらえたそれぞれの相手へ向ける独白の短編集です。

新一君から志保ちゃんへ。

志保ちゃんから新一君へ。

新一君から蘭へ。

蘭から新一君への恋歌を描いてみました。

いつもよりも短いです。

駄文ですが、最後までお付き合い頂けると恐縮です。

幼馴染みの彼と彼女の二人に対して、ほんの少し厳しくなっています。



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過去からの訪問者 後編

『世界一初恋 高律』よる『過去からの訪問者』の後編になります。

“純情ロマンチカ”のウサミサで登場した小説家の従兄弟である椎葉水樹と律ちゃんがイギリスで知り合っていたら?

嵯峨先輩に弄ばれたと思い込んで、海外へ旅立った律ちゃんの意外な過去を妄想してみました。

律っちゃんと水樹の関係、そして前編の最後で描いた事情。

もしかしてあったのかもしれない、IFなお話です。

オリキャラが登場します(*^_^*)

過去とはいえ、律ちゃんがひどい目に遭いますので、苦手な方は閲覧をお控えください。

駄文ですが、最後までお付き合いいただけると恐縮です。


※※※※※


最新のコミックにて、新キャラが登場しましたが、この作品はあくまでIFなお話であることをご了承ください

律ちゃんと水樹の関係が、同じ財閥同士どこかで繋がっていたらなあ~という、願望に過ぎませんので~(^^♪






過去からの訪問者 後編 


 ~現在~


「――――で、俺は信頼できるヤツに律を頼んだんだ。未遂とはいえ、暴行されそうになったんだからな。・・・あのときの律は、普通じゃなかった。すぐに診てもらわないと大変なことになるって・・・そう、思ったんだ。」

「それで・・・?」

「まあ、結果として襲われた事実はぼんやりと覚えてるけど、それが仲の良かったルームメイトのヤツだったなんて認めたくなかったんだろうな。顔を覚えてないって言ったし、事件の前後の記憶も曖昧でさ。それだけが救いだったよ。」

「じゃあ、その男はなんのお咎めもなしになったっていうのか!?ふざけんなよ!!律にひどいことしたくせに平然としてたなんて許せるかよ!!」

 ひどい仕打ちを聞かされていた高野は水樹の相手への気遣いも見せた態度に、とうとう大声をあげた。

「・・・・・・こんなこと言うのもあれだけど、ヤツはヤツでかなりショックを受けて故郷に帰ったんだよ。もうここにいられないって、俺にだけいろいろと話してくれて・・・詳しいことは言えないけどさ、アンタならヤツの気持ちが少しでもわかるんじゃないか?」

 だが、暴行をした後に我に返って自己嫌悪に陥ってしまった彼を知る水樹は、それ以上を追い詰めることはできず苦しんでいたことを伝えた。

 そうと言われた高野は押し黙った。

 同じ人を好きになった高野なら、その傷の痛みが・・・と。

 事情は違えども、心に受けたショックは経験済みだから全然ないとは言い切れなかったのだ。

 好きなのに、苦しめるような真似をしたのはその男だけではない。

 高野、そして律も同罪だった。

 水樹は高野が黙ったことで続きを話し始める。

「律はさよならも言えなかったことでかなり悔しがっていたけど、隙の合った自分にも非はあると言い張って、寮長たちに内密に処理をしてくれって頼み込んだんだよ。俺も一緒に説得したし、最後までされてないことや、あまり覚えていないのが幸いしたのか彼らもそれを了承してくれたよ。」

 それでも、全てが丸く収まったワケではない。

 度々、悪夢にうなされ、トラウマを発症した律は情緒不安定になったのだ。

 その時に、傍にいることを名乗り出たのが水樹であり、特例中の特例として信頼を置ける人物だと判断され、時間が許す限り入居を許可し、律の面倒をみていた。

 時間をかけて、心に受けた傷を癒し・・・ずっと付き添って、うろ覚えの暴行犯の男はもう罪を受けていると言い続けて。

 架空の人物を作り上げたその野郎は常習犯で、一生檻から出られないから安心しろと、水樹は切に語った。

 そのおかげか、律は徐々に悪夢にうなされることが減り、少しずつではあるが笑顔を取り戻しつつあった。

「そうか・・・アンタが律を支えてくれたのか・・・俺はてっきり、」

「昔の男だと思ったって言うのか?心外だな。俺は確かに律のことは好きだけど、そういう意味じゃないぜ?親友として律を大切に想うのは当たり前のことだろ?支えないほうがどうかしてる。」

 被さるように高野の言葉を否定した水樹は面白くない顔で答えた。

 どうやら水樹は横澤と同じようなことをしていたのだ。

 そこに肉体関係があるかないかだけで、親友としての情だからこそ大切に想い、横澤が律を責めたように水樹も高野を責めた・・・それだけのこと。

 律と高野が好き合っている経緯を知って、それなりに納得はしたけれど、やはり水樹は高野のことが気に入らない。

 第一印象というのは厄介なもので、それを覆すのは困難なものだ。

 ただでさえ、律を傷つけた過去があるからどうしても高野を敵と認識してしまうのも無理はなかった。

「すまない・・・」

「・・・まあ、別にいいけどな?俺は律が幸せならそれでいいし、アンタがまたアイツを傷つけるってんならボコボコにすればいいだけの話だ。」

「・・・・・・ありがとな、律のこといろいろ迷惑かけて・・・」

「アンタにお礼を言われる筋合いはねえよ。・・・・・・あ、今日は従兄弟のトコに行くって律に言っといてくれる?また連絡するからってさ。」

「・・・・・・わかった。」

 背を向けて、バイバイと手を振る水樹に、高野はその場を後にした。

 想像以上の律の過去を知り、自身が原因で起きたその出来事を胸に刻みながら。





◇◆◇◆◇


「あんな男のどこがいいのかわからねえな。」

 高野と部屋から出た後、水樹はポツリと呟いていた。

 日本に戻り、困っている男性を助けたことで律と再会し、喜びを感じていたのも束の間。

 まさか、散々な目に遭わせた昔の男と恋人になっているとは思ってもいなかったのだ。

 いくらなんでも趣味が悪すぎる。

 水樹は言わなかったが、嵯峨である高野の記憶もその時に薄れていったのは所謂、トラウマが重なったことで同じように発症したのではないかと医師から伝えられていたのだ。

 失恋をきっかけにイギリスへ来たところに、暴行未遂を経験してしまえば心が悲鳴をあげても仕方がない。

 人間は自己を護る為に嫌なことは忘れることのできる唯一の生き物。

 律はそれをやってのけただけに過ぎない。

 無意識に、嵯峨のこともシャルルのことも・・・

 水樹にも常々、過去のことはもう忘れてしまえ、いつか律のことを愛し愛される人が現れるから、と言われていたのもあったのだろう。

「それでも、律はまた出逢ったんだな・・・・・・運命ってのは実に残酷だ。なにも同じ男を好きにならなくてもよかったのに・・・」

 彼の親友であることは誇りに思っているが、離れていってしまった寂しさが水樹の心の中に浸透してくる。

(もうおまえは泣いてないんだな、律。)

 二人の間にどんな想いを持ち、恋人になったのかはわからない。

 だけど、彼らは運命から目をそらさずに向き合い、手を離さなかった。

 そんな微笑ましいやりとりが目に浮かぶようで、水樹はふっと笑う。

「あ~あ、当てられちまったな~。」

 なんだか無性にアイツに逢いたくなってきた。

 ずっと片想いをしている従姉妹の薫子に。

 でも、アイツは俺のことを男として意識してない。

 それはもう清々しいほどに。

 水樹は彼女が気に入っているであろう秋彦のマンションに住む高橋美咲という男にでも、ちょっかいをかけてやろうと心に決めた。

 少しどころか、かなり鈍感なヤツの反応でも見て、憂さを晴らそうと。

 



◇◆◇◆◇


 高野はようやく丸川に戻り、律の顔を見ることができた。

 飛びつきたいほどの感情を抑え、今はするべき仕事へと取り掛かろうとデスクに座る。

 しばらく、急ぎの物から片していっていると、徐々に自分のペースで業務を終えた同僚たちが一人、一人と帰って行く。

 そして、最後には高野と律だけが残った。

「あの・・・、高野さん。」

「ん~?もう終わりか?」

「あ、はい。あと10分もあれば終わります。」

「んじゃ、一緒に帰るか。俺も終わるし、ちょっとだけ待っててくれ。」

「わかりました。」

 まるでいつもの会話のように交わすそのやりとりに律は自然と頬が緩む。

 離れていた時間がとても長く感じただけに、こうも幸せになれるのは高野だけなんだと。

 水樹には、時間がかかってもいいから理解してほしいと強く思った。

 そして、帰り支度をし、電車に乗ってもうすぐマンションに着く坂の途中で高野から水樹が部屋にいないことを知り、彼に悪いことをしたなと反省していると手をそっと握られてしまう。

 つい周りに人がいないか確認してしまう律だったが、なにも言わずに前を向く高野の表情に同じくギュッと握り返す。

「す、少しだけですからね・・・」

「・・・・・・やっぱ俺、お前のこと好きだわ。」

「わ、わかってますよ・・・」

「ん。でも、言いたかったからさ。」

「・・・・・・バカじゃないですか。」

 つい憎まれ口を吐く律だったが、その顔は憂いを満ちていて・・・

 早く自分たちの部屋に帰りたいと、二人して同じことを思っていた。

 しかし、次の瞬間。

ぐうぅ・・・

「「・・・・・・。」」

 腹の虫が鳴ったことでムードが台無しだと唖然とする二人。

 すると、高野が声に出して笑い始めた。

「わ、笑わないで下さいよ!」

 それでも笑っている高野に律は睨む。

「高野さん!もう、やめてください!仕方ないじゃないですか!」

「わるいわるい・・・けど、やっぱり律はこうじゃねえとな?」

「人を食いしん坊扱いしないでください!これは安心したせいで鳴っただけで、決してお腹が空いてるんじゃないんですよ!?」

「いいっていいって、すぐになんか作ってやるから。なにがいい?」

「・・・・・・オムライスが食べたいです。ハンバークも付けてくださいね。」

「はいはい、チーズ入れて、上にデミグラスソースでもかけるか。」

 きゅぅぅ~
 
 それを想像した律のお腹が再び鳴る。

 高野は再び、笑い出した。

「もう!高野さんなんか知りません!」

 律はつい口を尖らせて、そっぽを向く。

 だが、繋がれたままの手が本気で怒っているのではないとわかると、高野は心が温かくなるのを感じるのだった。





◇◆◇◆◇


 高野の手によって夕食が作られ、テーブルにそれらが置かれていく。

 まだ機嫌の悪い律を高野は愛しそうに見つめ、声を掛けた。

「ほら、律。メシできたぞ。」

「・・・はい。」

 まだ怒ってますという顔をしながら、椅子に座り、手を合わせる律。

 だが、目の前に大好物の高野特製オムライス&ハンバークを見た途端、自然と口角が上がっていく。

 ナイフを入れるとチーズがとろりと零れるのを、ソースと絡めて口に含む。

 すると、律の表情がパアっと明るくなったのだ。

(うう・・・悔しい。けど、美味しいんだよ~~!高野さんの料理!!)

 ちらりと高野を見ると優しく微笑んでいるのに気づくと、律の顔が赤くなった。

 それは反則だ・・・と心の中で思いながら食を進める。

 片づけを終え、一緒に風呂に入ろうと言う高野に抵抗するがポイポイと服を脱がされてしまい、浴室で交わることになった。

 そして、ベッドへ抱きかかえられると第二ラウンドに突入する。

 高野の手から与えられる快楽に酔って、とうとう律は気を失うかのように眠りについた。

 屈託のない笑顔で自身に寄り添う可愛い恋人に高野は唇にキスを落とす。

 腕枕をして今日の出来事を高野はふと思い出す。

 律は水樹との関係はただの親友であると言われたけど、なぜか納得できていなかった。

 彼は無意識に律を恋愛感情で好きでいたに違いないと。

 そうでなければ、あそこまでしない。

 一線は超えていないけれど、プラトニックな想いが彼にとっての愛情だったのでは・・・と、そう感じた。

(ある意味、彼も辛い想いをしていたんだな・・・不毛な恋は神経をすり減らすって言うし・・・きっと律は、知らずに彼を支えていたんだろう。)

「・・・ったく、モテてることに気づかねえもんな。律は。」

 つい律の頬を軽く抓ってしまう。

 だが、へらりとした可愛くて、高野はうっ・・・と悶絶するしかなかった。

 過去からきた訪問者は自分の知らない律を知っている。

 そのことは、やはり気に入らない。

 支えてくれたことに感謝はするけれど、それは別問題なのだ。

 高野も水樹と同様に子供じみた性格だと、当人たちは最後まで気づくことはなかった・・・





♪お・ま・け♪


「おい、水樹。おまえが言ってた彼らのネタ、今度の新作に使わせてもらっても構わないか?」

「え?別にいいけど・・・なんか、アホらしくない?」

「いや、そういう要素が欲しいと相川からも言われていてな。おまけに部下と上司なんて、ますます興味が湧いたよ。」

「・・・因みに、どんなところが気に入ったんだよ?」

「俺様な攻めとツンデレな受けなのに、実は精神的に攻めなのは受けのほうだったってところだな。あと、無自覚なモテっぷりもいい。男心をくすぐる。」

 その男の自信たっぷりの発言に水樹は呆れる。

「・・・あっそ。好きにすれば?」

「貴重なネタ、感謝するぞ。」

「はいはい。」

 こうして、宇佐見秋彦が兼用しているBL小説家・秋川弥生の手によって本が完成された。

 俺様な上司とツンデレな部下の恋愛模様を描いたそれは大好評になる。

 ピュアな心を持った同性同士の恋愛は干物化した女性だけでなく、今までその存在を知らなかった者達に対しても大いに影響したのだ。

 これこそが世界一初恋・・・であると。


謝罪&報告です(+_+)

諸事情により、最新のお話でコナンと西の探偵のお話を非公開にしてしまって、申しわけありません。

遅くなりましたが、ここにて報告します。(*_ _)

最近になって、少し気分がよくなってきたので、コメントのレスをまとめてしますね!




※※※※※


コメントを頂いた方たちへ。


コメント、ありがとうございます。

今回は場所ばかりに拘って、告白できない彼に告白させましたけど、彼は喧嘩腰に言うのが自然だと思っています。

てか、フツーに告白するのってあんまり想像つかないというか・・・

シンプルに「俺の女になれや!」とか「せやから和葉が好きやっちゅーとるやろうが!」のほうがいいじゃないのかな?

コメント内に書かれていた台詞をさらにリアルに考えたら、

「ええ加減にせえよコラァ!!和葉が好きやっちゅーとるやろうが、何べんも言わすな、こんの鈍感女!」

ってな感じになるのではないかと思っています。

健全な高校生ならではの男性視点を楽しんでもらえて、幸いです。


それでは。


※※※※※

才に傲りてもって人に驕らず、寵をもって威を作さず

ブログ内で頂いた小ネタを使った、短編になります。

組織壊滅後の新一君に戻った彼と、溺愛する大人たちのお話です。

山村に厳しい作品となっています。

因みに、新一君サイドの登場はありません。

同じく、蘭の出番もないですけど、このシリーズは全体的に彼女の扱いが悪いのでタグをつけさせていただきます。

書きたいところだけを書いた、短編小説ですので、ツッコミは控えめに(*_*;

今回は警察関係の人たちが初登場になっています。

あと、小五郎に関しても厳しいので、山村・蘭・小五郎のファンのかたは閲覧をお控えください。

山村の口調の語尾がイマイチ掴めていないため、おかしいところがあるかもしれませんが、穏便にお願いしますね(^^;)

お気軽に、最後までお付き合いいただけると恐縮です。


※※※※※


ネタを頂いた方へ。

半分くらいと言っていましたが、ほとんど使ってしまいました。

大変、感謝しております(^^♪






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貴方の笑顔が見たい、ただそれだけ

電話の会話を主とした、『原作 オリジナル』よりの投稿になります。

因みに、組織壊滅後で彼は新一君の姿に戻り、高校3年に無事進級できました。

現実問題でいうならば、進学か就職かを選ぶ大事な時期にあり得そうなお話。

同じ幼馴染みでも、違う彼女たちの会話にご注目を(^^♪

そして、あいかわらず蘭に優しくないので、彼女のファンのかたは閲覧をお控えください。

苦情は受け付けませんので、悪しからず。

最後までお付き合いいただけると恐縮です。





貴方の笑顔が見たい、ただそれだけ


 新一は多大なる問題を抱えて、苦しんでいた。

 ついに蘭からは返事がもらえなかったことで、ようやく失恋したことを受け入れたというのに、帝丹へ復学してからも変わらない態度に戸惑っていたのだ。

 待たせていたことを盾にトロピカルランドへ連れていけ、それで費用は全部新一がおごるのが当然だと言われたり、断ると空手で脅して周囲を味方につけてくる。

 そんな我が物顔でいられる幼馴染みに、自分はどこを好きだったのか、それすらもわからなくなっていた。

 あと1年で卒業する3年の教室で、進路調査票が教師より生徒たちの元へ配られると、新一はなんの迷いもなく第一希望に東都大、第二希望に海外の大学を記入した。

 だが、それに目敏く気づいた蘭が今度はとんでもないことを言い出したのだ。

「・・・え?新一、東都大に行くの?」

「ん?それがなんだ?」

「なに言ってるのよ、新一。せっかく帰ってきたのになんでまた私から離れるようなことしてんのよ?」

「は・・・?大学だぞ?普通のことじゃねえか。」

「普通じゃないわよ!アンタはね、私を待たせたお詫びに私の言うことをなんでも聞かないとダメなんだからね!東都大になんてやめなさいよ!」

「なんでオメーにそこまで言われなきゃならねえんだ?これは俺の問題だ。オメーに関係ねえだろ?」

「関係あるわよ!私達幼馴染み・・・じゃなくて、こ、恋人でしょう!」

「・・・俺、お前と恋人になった覚えなんか全然ないんだけど?」

「告白したくせによく言えるわね!」

「は?今さらなんだよ。あんなのはもう無効だろ?あれから一年も経ってるんじゃねえか。」

 そんな二人の会話にクラスメイト達のからかいの声が聞こえてくる。

「おい、お前らなにやってんだ~?夫婦喧嘩か~?」

「嫁さんに優しくしてやれよ、工藤~」

「そ、そんなんじゃないってば!もう、やめてよね!」

「蘭の言う通りだ。俺たちの関係はただの幼馴染み。それ以上でもそれ以下でもねえよ。」

「「「「「は・・・?」」」」」

 いつも通りの夫婦喧嘩だと思っていたクラスメイト達は新一のはっきりとした物言いに、つい面を喰らってしまう。

「とにかく蘭、俺は希望を変える気はねえから。待たせたことは悪いと思ってるけどよ。大学とそれを一緒くたにしないでくれ。」

「ちょっと新一!どういう意味よ!」

「・・・人に聞く前に自分で考えろよ。俺らもう高校生だぜ?いつまでもガキのままでいられると思ったら大間違いだ。・・・大人になれよ。」

 会話するだけで疲れる、新一は心底そう思うとその場を後にした。

 そして、かかってきた服部の電話に応対すると、彼もまた東都大に行くことを決めたと知るのだった。





『おう工藤!久しぶりの学校はどうや~?』

「・・・別になんとも。前と変わらねえし。」

『あいかわらずクールなやっちゃなあ。まあ、それはもうええわ・・・、実はなあ、工藤に知らせたいことがあってん!』

「あん?なんだよ?」

『俺、東都大に行こうと思うてんねん!やっぱり法律ゆうたらそっちのあの先生がいっちゃん有名やしなあ?やるんなら天辺目指したいねん。ほんで将来は刑事になったろと思うて!』

「そうなのか、じゃあ俺と同じだな。」

『ホンマかいな?いや~、工藤も絶対に同じやと思うてたわ。気が合うな~、俺ら。ちゅーわけでこれからそっちに行くことが多うなるし、そんときは面倒みてや~。あ、せやけどあの姉ちゃんとデート被るのは勘弁やからその辺はちゃんと言うといてや。さすがに痛い目に遭うのは嫌やし。』

「あ~~・・・、それなら大丈夫だ。俺ら別に付き合ってねえし。プライベートな時間までぎゃあぎゃあ言われたくないしな。」

『・・・・・・おい、ちょう待てや。お前らまだなんかい!?なにやっとるんや工藤!あんだけ待たせたっちゅうんにそりゃあないやろ!さっさと告って姉ちゃんを安心させたりぃや!』

「・・・・・・・・・・・・服部まで、そう言うんだな。」

『・・・・・・は?』

「要件はそれだけか?じゃあもう切るな。」

『くどぉ・・・、』

 彼は今までの事情を知っている、知っているからこそ服部の言葉に傷ついた新一は慌てて電話を切った。

 もう誰一人、自分の味方などいないのだと。

 そんな想いとは裏腹に、友情想いな服部は新一の異常を敏感に察知し、その数時間が経った後。

 工藤邸に着いて、事のあらましを知るのだった。






 夕方、和葉は自室で進路希望票の用紙を見詰めながら、唸っていた。

 最近になって、告白してくれた平次と恋人になったのはいいが、今まで同じ学校に通っていた二人が別々になることで初めての別離に不安を抱いていたのだ。

 そんなとき、ふと思い出したかのように蘭へ連絡を取り始めた。

「あ、蘭ちゃん。アタシ、和葉やけど・・・ちょっと話せる?相談に乗ってほしいことがあるんや。」

『大丈夫だよ。それでなに?相談って?』

「実はな・・・進路のことやねん。蘭ちゃん、進学か就職かもう決めた?」

『うん、進学にしたよ。えーっとね、私の成績だったら米花大あたりかなって思ってるけど。』

「じゃあ、工藤君とはバラバラになるんやね。寂しない?」

『そりゃ寂しいに決まってるじゃない!でもね、大丈夫だよ!今アイツを説得しているところでね・・・そうだ!和葉ちゃん聞いてよ。新一ったらね、あれだけ私のこと待たせたくせに一緒の大学に行くの渋ってるのよ。』

「は・・・?ちょっと待ってや。まさか蘭ちゃん、工藤君にレベル落とさせて同じ大学に行かせる気なん?」

『そうだけど、それがどうかしたの?』

「アカンてそれ!大学は将来の道を決める大事な分岐点なんやんで?米花大て・・・、こう言っちゃ失礼かもしれへんけど、東都大とは雲泥の差やんか!」

『だからよ、私の成績じゃ絶対に無理だし。それなら新一が私に合わせてもらわなきゃ困るのよ。なのに新一ってばさ・・・』

「そりゃ当然やろ。なんで自分のレベルに合わんトコに行かなならんのや?そんなん工藤君、可哀想やんか。探偵になるんやろ?」

『探偵って・・・あんな、なにが起こるかわからない仕事なんて本気でなれるワケないじゃない。それにね、これはアイツのために言ってるのよ!』

「工藤君のためて、余計意味がわからんわ・・・。なら希望する大学に行かせてあげるべきやろ?アタシかて、平次と遠距離になるかもしれへんけど蘭ちゃん見習って頑張ってみようかなって、思うてたとこやったんやで?」

『え?やだ和葉ちゃん大阪の大学受けるの?やめたほうがいいって!好きな人が傍にいたほうが絶対にいいよ!』

「せやけど・・・平次、刑事になる言うから応援してやりたいもん。」

『へえ~、刑事。いいじゃない、服部君だったらすぐにいい役職につけそうだし。いいわね和葉ちゃん、服部君と付き合えて。将来も安定ね。』

「別に安定しているから応援してるんとちゃうよ・・・」

『まあそうかもしれないけど、やっぱり結婚するとしたらねえ?できればそのほうがいいと思わない?』

「なんや蘭ちゃん、工藤君にプロポーズでもされたん?今は大学問題でそれどころやないんやろ?」

『ま、まだそういうことをはっきりと言われたワケじゃないけど・・・・・・、もし結婚するなら、足場をしっかりさせないとダメでしょう?だから私、頑張って説得してるのよ。』

 蘭の話す言葉に和葉はふと首を捻った。

(なんやろこの会話・・・蘭ちゃんの独り相撲に見えて仕方ないわ。気の所為やろか・・・?)

 とりあえず、和葉は蘭との電話の後に服部にそのことを話すと、現実は全く違っていたことを知るのだった。





 翌日、和葉は平次に蘭との電話のやりとりを話していた。

 だが、同じように新一と電話をしていた平次の話を聞き、その内容に愕然とした。

「は・・・?なんや、それ?」

「せやから今言うた通りや。あの姉ちゃんの言い分はそうかもしれへんけど、工藤の話聞く限りではアイツら付き合ってへんで?」

「なんでなん?だって工藤君、ロンドンで蘭ちゃんに告ったって・・・」

「それは事実やけど姉ちゃんの返事がない以上、関係は幼馴染みのままやろ。しかもなんや今の話・・・恋人どころか正妻面やんけ。」

「う、うん・・・なんか蘭ちゃんと話しとっても嫌な気分になってもうて。気のせいかと思うてたんやけど・・・・・・そないなことがあったんやな。」

「まあ、いくら幼馴染みいうても返事しなくていい理由にされとうないしな。俺らからしたら、嫌な気分になっても当然や。」

「・・・・・・せやな、ずっと蘭ちゃんのこと健気ないい娘やて思うてたけど、それとこれは別問題や。幼馴染みやからってワガママにも限度はあるし、返事してないんなら蘭ちゃんにそないなこと言う資格あらへん。」

「あれは度を越えとるで。自分に合わせろて、一体何様のつもりなんやろな。」

「・・・普通、大学て本人の行きたいところに行くもんやろ。相手に合わせるて聞いたことないわ。中学までならギリわかるけど、大学やで?」

「・・・まるで子供やな。工藤がおるから大丈夫やって考えてそうや。」

「なんやそれ・・・じゃあ、もし蘭ちゃんがアカンことしてもうたら、全部工藤君のせいにするかもしれへんってこと?」

「・・・確かに、あり得るかもなあ。」

「そんなん、蘭ちゃん非常識すぎるわ!平次がアタシんこと好きやって言ってくれたとき、本気なんか疑いはしたけど、アタシちゃんと平次に返事したもん。さすがに無視するんは人として恥ずかしいことやろ!蘭ちゃん・・・ホンマなに考えてんねん・・・」

「工藤の優しさを利用してるだけやて。なにも言わんでも察してくれって言いたいんやろな。」

「そんなん工藤君、ずっと蘭ちゃんの傍にいて、言いたいことを察しなアカンてことやんか。超能力者じゃあるまいし、それは無茶ぶりやで。」

「・・・せやから、工藤は姉ちゃんから離れたいって言うてたわ。」

「・・・・・・うん!アタシ、工藤君のこと応援するわ!・・・平次!しっかりと護ってあげてや!アタシ、大阪で自分のしたいことして、そんで平次のことも護るわ!せっかく工藤君と親友になれたんやから絶対に離したらアカンで!」

「ええんか・・・?それで?」

「うん!もう決めたしな!アタシ、蘭ちゃんとは縁を切るわ!あんな非常識な娘と友達なんてやってられへんしな!」

「ほんなら、遠距離になるけど。4年間またよろしゅう頼むで。」

「うん!平次とはずっと付き合っていきたいし、努力は惜しまへんで!」

 こうと決めたら男よりも女のほうが強いと言われている。

 和葉なら、自分を上手に立てつつも、ダメなときにはしっかりと叱ってくれるだろう。

 目の前の頼りになる恋人に、平次はそう思った。





 ――――そして、一年後の春。

 無事に東都大に合格した新一と服部。

 そこにキッドである快斗が加わったことで、キャンパス内では大変な騒ぎになった。

 因みに、蘭は無礼な振る舞いをし続けて、周りからの味方もいなくなったと聞かされている。

 親友の園子にとうとう愛想を尽かされ、距離を置かれたことで、蘭は大学受験を失敗したそうだ。

 しかたなく短大に入ったのはいいが、そこは知り合いなど誰一人いなく、自分を味方してくれる友人もいない。

 もう繋がらないただの物体になり果てた携帯を持ち続けるようなストーカーな女と、親しくしたいなんて思う学生がいるはずもなく・・・

 新一は元凶の彼女から離れたことで、ようやく本当の笑顔を取り戻すことができたのだった。
 

プロフィール

みゅう

Author:みゅう
ネットで同じ趣味を持つ人から小説を勧められて、それをきっかけに前から温めていた文章を元に作成、二次元ストーリーを書き始めました。
初めてのブログ開設で更新はかなり遅いと思いますが、もしよろしければお付き合いいただけると嬉しいです。

小説が主ですが、たまに日々の出来事も書くつもりです。

なお、小説は自分が作ったものなので原作者や出版社は一切関係ないので、ご注意ください。

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